読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

山本多助 『カムイ・ユーカラ アイヌ・ラッ・クル伝』

山本多助 www.heibonsha.co.jp カムイ・ユーカラ アイヌ・ラッ・クル伝1993(1978刊『怪鳥フリュー カムイ・ユーカラ』改題) 神話にしてはモダンな印象でしたが、それは語りをそのまま起こしたものではなく、読み物として、演劇として再構成されていたため…

萩谷朴 「貫之の勇み足」

萩谷朴紫式部の蛇足 貫之の勇み足2000 「土佐日記の勇み足」による土佐日記成立の背景: 歌壇第一人者としての名声と献歌を通じての辱知の関係とに一縷の望みをかけて、求職の申請書即ち「申文」として執筆し、忠平一家に献呈したのが土佐日記であったと私は…

上山春平 『空海』

上山春平空海1992 (品切れ・再販未定)再販希望図書館物件 朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:空海 良書。本書は研究書的な位置づけにある著作ではあるが、司馬遼太郎の『空海の風景』に匹敵する小説的著述としてのパワーがある。衝撃度的には本書のほうが上…

宮坂宥勝 『空海 生涯と思想』

宮坂宥勝空海 生涯と思想1984, 2003 筑摩書房 空海 生涯と思想 / 宮坂 宥勝 著 著者の空海関連のエッセイ18篇を集めたもの。空海本一冊目ではなく、興味を持ってからのつまみ食い本、復習本としての利用が吉。 おすすめは日本仏教史上における空海 最澄と…

山下隆義 『イラストで学ぶディープラーニング』第2版

山下隆義イラストで学ぶディープラーニング 第2版2018.11 bookclub.kodansha.co.jp 理系向き。数式込みで理解しようとすると文系にはハードルが高いが、なんとなく雰囲気はつかめる程度の説明になっている。とりあえず、技術動向を確認するには向いているか…

J.R.R.トールキン 『ファンタジーの世界 -妖精物語について』

J.R.R.トールキンファンタジーの世界 -妖精物語について-訳 猪熊葉子福音館書店版: 創造についての教え。 「空想」のなかで、人間は実際に「創造」の葉をひろげ、その豊かさを増すことを手伝うことができるのだ。(p144) すべての線が、曲線か直線か、そのど…

梅原猛 『空海の思想について』

梅原猛空海の思想について1976, 1980 bookclub.kodansha.co.jp 肯定する空海の強調。100ページで一挙に核心に連れて行ってくれます。『生命の海 「空海」 仏教の思想〈9〉』所収の「死の哲学から生の哲学へ」よりも、空海の個別の著作によりそいながら彼…

宮坂宥勝+梅原猛 『生命の海 「空海」 仏教の思想〈9〉』

宮坂宥勝+梅原猛生命の海 「空海」 仏教の思想〈9〉1968, 1996 www.kadokawa.co.jp 密教の再発見 対談:宮坂宥勝+梅原猛 隠れた真相があるというのが、やはり秘密じゃないかと思うのです。近代的な意味の神秘主義ではないんですけれども、そこに、何かとらえ…

谷川俊太郎編 まど・みちお詩集

まど・みちお詩集谷川俊太郎編2017 www.iwanami.co.jp 「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」の詩人として少しは読んだこともあったとのですが、今回この岩波文庫の詩選集を読んでみて、子供向けのメルヘン詩人という印象が吹っ飛んでしまいました。あゆみのし…

見田宗介+大澤真幸『二千年紀の社会と思想』

見田宗介+大澤真幸二千年紀の社会と思想2012 www.ohtabooks.com 対談+大澤真幸の論考。弟子筋の大澤さんがたくさんしゃべってます。 大澤さんメモ: 日本に限らず、伝統社会では、安定した秩序があるときには、社会は定常状態にある。大きな変化があるときは…

ショウペンハウエル 『自殺について』

ショウペンハウエル訳 斎藤信治自殺について1851 (訳 1952) www.iwanami.co.jp 目次:我々の真実の本質は死によって破壊せられえないものであるという教説によせて現存在の虚無性に関する教説によせる補遺世界の苦悩に関する教説によせる補遺自殺について生…

松本卓也 『人はみな妄想する -ジャック・ラカンと鑑別診断の思想-』

松本卓也人はみな妄想する -ジャック・ラカンと鑑別診断の思想-2015 青土社 ||哲学/思想/言語:人はみな妄想する ラカンの思想の変遷を、時代を追って図式的に明快に示してくれているので、とても読みやすく、精神分析学習の階段を一歩のぼった気になれて…

デレク・ウォルコット 『オデッセイ』

デレク・ウォルコットオデッセイ訳 谷口ちかえ1993 www.kokusho.co.jp 英国のロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの委託により作成。ホメロス『オデュッセイア』のパロディ。「廃物となった石油のドラム缶を輪切りにして天板にチューニングして創ったステ…

中島秀之+ドミニク・チェン 『人工知能革命の真実 シンギュラリティの世界』

中島秀之ドミニク・チェン人工知能革命の真実 シンギュラリティの世界2018.02 web-wac.co.jp 対話者二人の気になる発言。 ドミニク・チェン 人工知能技術を使って、どういう人間になりたいのか、という問いと向き合いながら活動することによってこそ、テクノ…

千葉雅也 『メイキング・オブ・勉強の哲学』

千葉雅也メイキング・オブ・勉強の哲学2018 books.bunshun.jp ※文春提供記事も読めます。 キーワード:有限化、別様にものを見る可能性、コードのない世界=縮減的・自閉症的世界、非意味的切断 第4章「欠如のページをめくること」では、ほかの著作中にはあ…

夏目漱石の漢詩を読む

飯田利行著新訳 漱石詩集1994 出版社:柏書房 新訳 漱石詩集 柏書房株式会社 ノンフィクション・歴史・古文書の出版社 図書館物件(品切れ・重版未定)出版社によれば「唯一の漱石詩全訳本」とのこと。訳文は超訳の部類に入るかもしれません。 例えば大正五…

松浦友久 『漢詩 美の在りか』

松浦友久漢詩 美の在りか2002 www.iwanami.co.jp 良書。漢詩が身近に感じられる視点を提供してくださっています。特に5章は秀逸。 「訓読漢詩」というものが、事実上、日本語の「文語自由詩」にほかならないこと、それによって、「和歌」や「俳句」のような…

ナンシー・ウッド  『シャーマンの環』

ナンシー・ウッドシャーマンの環―過去、現在、未来が溶けあう聖なる知識訳 井上篤夫 図書館物件 bookclub.kodansha.co.jp プエブロ・インディアンの教えから詩を紡ぐナンシー・ウッド。同じ著者による『今日は死ぬのにもってこいの日 』も読んでいるには違い…

松尾豊 超AI入門

超AI入門 ディープラーニングはどこまで進化するのか[編著] 松尾 豊 NHK「人間ってナンだ?超AI入門」制作班2019.02 www.nhk-book.co.jp Eテレ「人間ってナンだ?超AI入門 シーズン1」(2017.01~12)をもとに再構成したもの。 短時間でTVシリーズ…

三宅陽一郎監修 「マンガでわかる人工知能」が良い

マンガでわかる人工知能三宅陽一郎 監修備前やすのり マンガ執筆協力 三津村直貴 2017.11 www.ikedashoten.co.jp 「マンガ+イラスト図解で、難しいテーマをわかりやすく解説」。マンガとイラスト図解で複数回、用語や歴史、現状、課題を説明してくれるので知…

菅原道真 菅家文草 菅家後集 メモ(表形式)

菅原道真 菅家文草 菅家後集 メモ(表形式) 菅家文草 巻一 2 臘月独興。 p105 学業の勧め 11 翫梅華、各分一字。 p116 春一番の風 39 八月十五夕、待月。席上各分一字。 p134 宴を準備し客を呼んだのに月が出ないで残念 76 海上月夜。 p163 敦賀の津に到着…

菅原道真 菅家文草 菅家後集

菅原道真 日本古典文学大系4 菅家文草 菅家後集川口久雄 校注 図書館物件 新規入手は岩波オンデマンドブックスで可能 菅家文草 菅家後集 - 岩波書店 私はしばらく図書館と古書店をうろつこうと思います。それで、返却期限が迫っているためとりあえず再読用…

大岡信の菅原道真

大岡信 詩人・菅原道真 うつしの美学1989 (岩波現代文庫 2008) www.iwanami.co.jp 菅原道真の漢詩の紹介というよりは、副題の日本文学における「うつしの美学」の考証により価値があるような本です。和歌と漢詩文との比較のなかで和歌が優位にある日本の文…

加藤周一の菅原道真

『日本文学史序説 (上)』(ちくま学芸文庫)1975 筑摩書房 日本文学史序説 (上) / 加藤 周一 著 読書メモ:p135 貫之・道真に代表される九世紀末の知識人文学の成立は、その後の日本文学史を視野に入れるとき、まさに画期的であったといわなければならな…

李賀

李賀の全作品を初めて通読。 図書館物件。 集英社 漢詩体系13 李賀1967 訳・解説:齋藤晌 通読してから翻訳解説者の齋藤晌がスピノチストでエチカの翻訳もあることを知って、少し思いを巡らしました。李賀のコナトゥスってどのようなものだったのでしょう…

ベケットの劇を読む (ベスト・オブ・ベケット3)

サミュエル・ベケットベスト・オブ・ベケット3しあわせな日々/芝居白水社 (1991/01) 近頃新しい訳者による新しい組み合わせの戯曲集(新訳ベケット戯曲全集1,2)も出ているようですが、手元にあるのは1991年出版の旧版です。キャストをつけて脳内上演を試み…