読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

2020-01-31から1日間の記事一覧

野口米次郎「山上」(From the Eastern Sea 1903『東海より』より)

山上 われ山上に立ち、深い霧に自らを失ふ時、われその柱となつて、宇宙に作られたりと思ふ………天地創造の始め、深さ否深さのない深さの上に立つ神は、則(すなは)ちわれらにあらざるか。 (From the Eastern Sea 1903『東海より』より) 野口米次郎1875 - 1…

野口米次郎「春」(From the Eastern Sea 1903『東海より』より)

春 春、翼の春、笑ふ蝶々、彼方に煌(きらめ)く、瞬間の天女。芳(かぐは)しい愛人の小さい影、乙女の春、今消えゆく、魅力を尽くして、影、黄金の影。春、横着な可愛いい春、気位高い男たらし、笑ふに生れた、生きるのでない、春、飛びゆく春、麗しい駈落…

ニコラウス・クザーヌス「テオリアの最高段階について」(1464) 佐藤直子訳

ニコラウス・クザーヌス最後の著作。可能であることについての言説。 実際、可能自体が存在するか否かを問う人は、注意するならただちに問いの不適切さを看取します。可能なしに可能自体について問うことは可能でないのですから。可能自体がこれであるか、あ…

加藤郁乎編『荷風俳句集』(2013)

淡い味わいの文芸作品。風流の人というよりは侘しさをまとった人が生きた言葉のすがた。香ることもあれと敢えてとどめた情感の残滓。 007 まだ咲かぬ梅をながめて一人かな188 凩(こがらし)や電車過ぎたる町の角(かど)233 寂しさや独り飯(めし)くふ秋の…