読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

2020-08-13から1日間の記事一覧

野口米次郎「想像の魚」(『最後の舞踏』 1922 より )

想像の魚 私の胸に底の知れない谷が流れ、その上に弓なりの橋が懸る。橋の袂で私の魂の腐つたやうな蓆を敷き、しよんぼりと坐つて、通行人を見かけては、糸の切れた胡弓を鳴らしてゐる。『穢しい乞食だな』とある人は叫び、またある人は無言の一瞥さへ与へず…