2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧
きれいに整理されていてわかりやすいというか付き合いやすい現象学の解説書。フッサール自身の文章の繰り言じみたしつこさ(=『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』を読んでの私の印象)を逆照射もしてくれて、フッサールの現象学へのこだわり方の特異…
入門書という位置づけとしては具だくさん且つ野心的な構成の一冊ではないかと思う。初期の『論理学研究』と中期の『イデーンⅠ』を中心に論は進められていくが、フレーゲとの差異やクオリアに関する議論などが混じって展開されるので、初級者には思考を追って…
釣鐘 私は釣鐘、空虚の心、………冷く寂しく、桷(たるき)からぶらさがつて、撞木(しゆもく)で敲(たた)かれるのを待つて居る。私はこれ感応の心、生れて以来幾十年間、生命の桷からぶらさがつて、独り無言で、人の圧力を待つて居る。ああ、空虚な私の心、…
原典ノンブルによる進捗:628/628 (100.0%) 2020.07.22(水曜夜)~ 07.28(火曜夕)おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉(芭蕉)循環する小説とされる『フィネガンズ・ウェイク』をワンセット読み通した今、達成感よりもかすかな哀感が滲んできている。それは読…
原典ノンブルによる進捗:501/628 (79.8%) 飲んだら読むな、読むなら飲むな。そんな作品が存在する。 TVショーでのお笑いは、視聴者のセンスがよほど崩壊していない限り酔っていても十分楽しめるけれど、読書においては読み手の読み取りの能力が少しでも減退…
原典ノンブルによる進捗:455/628 (72.5%)文学の世界では「何も書かれていない書物」という極限があって、一方にマラルメの『骰子一擲』、もう一方にジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』がある。極限まで削られた言葉と極限まで多層化されベクトル積算で圧…
進捗:400/628 (63.7%) 第Ⅱ部終了状態でSTAY 異なるフィクション空間での相互干渉を期待して、前回のエントリーで名前を出したティム・バートン『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)のDVDを呑みながら2周くらい観る。フィクションでの本当らしさ…
原典ノンブルによる進捗:400/628 (63.7%) 第Ⅱ部終了『フィネガンズ・ウェイク』の形式はほぼト書きなしの演劇台本みたいなもので、その中身はおおむね聖書のパロディでできている。語られる内容は、飲食と性交と排泄と論争(というかからかい合いとののしり…
原典ノンブルによる進捗:308/628 (49.0%) +2行でSTAY 飲んじゃったら読みすすめられなくなったので、第Ⅰ部終了時にやろうと思っていた、現在の読解環境を紹介。 ジェイムズ・ジョイスが孫に向けて書いたお話をもとにつくられた絵本『猫と悪魔』は、愛すべき…
原典ノンブルによる進捗:308/628 (49.0%) 近代小説は神話やロマンスのパロディとして出てきたものだ。セルバンテスの『ドン・キホーテ』は騎士道物語、フロベールの『ボヴァリー夫人』は恋愛物語のパロディとして成立している。主人公は近代の出版事情から…
原典ノンブルによる進捗:195/628 (31.1%) 『フィネガンズ・ウェイク』の柳瀬尚紀の翻訳が、単純な直訳ではなく、繊細な読解と大胆な日本語化能力を併せ持った人物の手ではじめてなしとげられた驚くべき業績だということは、一般読者層にもストレートに伝わ…
原典ノンブルによる進捗:113/628 (18.0%) 『フィネガンズ・ウェイク』はどんな話かというと、今読んでいる部分(第Ⅰ部)に関しては、アダムっぽい風味付けをされた中年男H.C.Eとイブっぽい風味付けをされたA.L.Pをめぐる評価話みたいなものではないかと思っ…
原典ノンブルによる進捗:74/628 (11.8%) ちょこちょこ検索したりしながら読んだりしているとページ当たり5分くらいかかっている計算になる。四日で読み終わるかどうかちょっと心配。 ※読みながら無季俳句とか作って遊んでいるのも時間がかかっている原因な…
よく出来たカント入門書。いきなり『純粋理性批判』ではなく要約版の『プロレゴーメナ』から入るべしという教え。300ページ程度で過不足なく紹介してくれているのがありがたい。ストレートな味わいですっきり読める。早稲田大学大学院での授業がベースと…
イタリアの天才物理学者が突然失踪した理由を思想的側面から推理するアガンベンの著作。著者がマヨラナの失踪について最終的に提示した見解よりも、そこに到るまでの統計確率の学問的解釈に目を惹かれた。「決断することを可能にする科学」としての統計確率…
しふくのかるさにたえうるきょうじんなうかいこうぞう つつしみぶかくもむきだしとなるくうどうとわくぐみに そうだんもなくあめかぜをうちつけるふしょくのときを うすくかぶせてこのよのなかにこのよのそとをむかえる 〔文字色雨色でカタカナ文〕シフクノ…
情報理論の父、クロード・シャノンを紹介した入門書。「あらゆる情報は数値に置き換えて表わすことができる」として、情報のデジタル化を理論的に支えた業績を3つの視点からとらえられるようにしている。 1.情報を量ることができることについて2.情報を…
数学が苦手な社会学者古市憲寿が狂言回しとなって、統計分析の初歩をレクチャーしてもらう対談形式の一冊。用語に馴染むというところからはじめてくれているので、敷居がとても低く初心者に優しい。IBMのSPSSを実際に操作しながら統計分析の手法を学んでいく…
むずかしいすきまじかんのまんなか むしされているばでかすかにうごく むきゅうのだんすあんこくのぶとう
計算力が高まれば世界は変わる。一般市民にとってはたぶんセキュリティの世界が変わることにいちばん影響がでてくるだろうか。量子コンピュータは量子力学の現象を応用したコンピュータのことで、並列計算によって古典的コンピュータの計算力を超えることが…
うすずみいろにうすくうずまくせいかつのさきゆき たんねんにととのえようにもすいぶんがおおすぎて たたみによこたわるからだのしたにこうずいがまつ ねんきんじょうのいしきのしょくしゅはちぢこまる
エマニュエル・レヴィナスの弟子筋の宗教哲学系の作者が綴った穏健なスピノザ解説書。前半で『神学・政治論』、後半で『エチカ』を概観する。本書でいちばん目を引いたのはスティーヴン・ナドラーの『スピノザ』から引用された、ユダヤ教会からの破門状「ヘ…
世の中には負けてもいいと思える人がかなりいる。別次元の熱狂に身を浸らせている人には、もうアッパレとしかいいようのない没入感で世界を動かしている様子を見せていただくしかない。フェルメールを愛する科学者福岡伸一は全点踏破の旅を敢行するばかりで…
プリントサレタブンショウガウミダシタヨハクニ ロンソウノタネヲマクコイエンピツノラクガキヲ レンメントカキツケテブリョウナジカンヲツブス ゴハイサレタゴイノカズカズヲサライツヅケテハ メンタルガボロボロニスリヘルコノオレハダレダ ナノナイモノニ…
ヒエロニムス・ボッスの植物系の形象について、理解が深くなればいいなと思い読みすすめてみたところ、ボッスよりもゴッホの樹木の意味合いについて教えられることが多かった。 錬金術においては、樹木は錬金術的変容の諸相の象徴とみなされ、梯子のように一…
あきれかえるほどのたいこからうけついできているのは くもなくふかくからだをほりおこしてふくらませている びっくりするほどあたまからっぽなひとつづきのじかん がんばってもだめなときはゆっくりおおきくあおむいて できるだけひっそりたいきをとりこむ…
全集最終巻。詩を書きとおした人生に触れる。 だれもぼくの足跡を見たことはあるまいどんな砂浜でも波に洗われてどんな砂漠でも砂嵐におそわれてぼくの言葉を聞いても意味が理解できないのだから言葉は鳥語にすぎない小鳥はよってくるが鷲や鳶は空の高いとこ…
全集5には2詩集が収録。『狐の手袋』(1995)『1999』(1998) 70歳を越えて、新たなチャンネルが開かれたような感覚の詩が出てきた。翁の文学、老年の詩ととらえればいいのだろうか? 希望も展望もない乾いた悲しみに、少しだけ好きなものと愛するものが混在…
全集4には4詩集が収録。『新世界より』(1990)『ぼくの航海日誌』(1991)『ハミングバード』(1992)『灰色のノート』(1993) 老年を迎えても相変わらずよく書く田村隆一。1990年代出版の作品のことばには、ぶっきらぼうな厳しさが入り込んできたような印象を受…
全集3には6詩集が収録。『5分前』(1982)『陽気な世紀末』(1983)『奴隷の歓び』(1984)『ワインレッドの夏至』(1985)『毒杯』(1986)『生きる歓び』(1988) 1980年代は毎年のように詩集を出して、書きすぎじゃあありませんかといいたくなるような時期だ。何を…