2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧
近現代美術界。商業的にひとりの美術家が成功すると、その周りにいたひとたちも同時に注目されるようになり、すこし潤う。知られず見られることもなかった状況から、共に見られる状況にすこし変わる。それぞれの作家への深入りは、あったりなかったりで、必…
共通善は common good であるので、翻訳では消えてしまっているけれども共通財とも常時かぶせて読んでくれというようなことが翻訳者側から注意として書かれていたような気がすることをルソーの講義では思い出した。 一般意志は共通善を意志するのですが、そ…
モンテーニュ(1533 - 1592)の『エセー』をつまみ食いしているなか、日本の同時代人が気になったので、千利休(1522 - 1591)の語録系の著作を読んでみた。現代から遠く離れた時代の生活感を感じるとともに、茶道などの知らない分野について書かれた古典的…
社会学者の見田宗介(真木悠介)がカスタネダの世界を見る瑞々しい眼差しにインスパイアを受けたと言っていることを知り、かつドゥルーズ=ガタリが「器官なき身体」を語るにあたってカスタネダを肯定的に引用しているという情報も少し入ってきたために、だ…
社会学者見田宗介(真木悠介)の本を三冊連続で読んだところで、社会学のはじまりを知っておくために社会学 sociologie という言葉自体の生みの親、オーギュスト・コントの著作を読んでみた。見田宗介の本にはウェーバーやデュルケムへの言及はあってもコン…
貨幣による交易がはじまり世界が無限化したときに人々は衝撃をうけ、その空気感のもとではじめて哲学と世界宗教が生まれたというヤスパースの「軸の時代」という考えの延長上で、環境的にも資源的にも限界状況に踏み込んでしまった現代は、また別の「軸の時…
ホッブズ、ロックの社会契約説からヒュームとミルの功利主義へ講義は移る。自然法による原始の契約から効用の原理での合意選択へのイギリスの政治思想の流れをみながら、ロールズは経験主義哲学者でもあるヒュームの政治思想の面を、主にロックとの対比で語…
2017年2月の6章改訂版以前の版での繙読。改訂前後の6章の目次を見る限り、2018年出版の『現代社会はどこに向かうか 高原の見晴らしを切り開くこと』で改訂分は補完可能(序章が改訂版6章と同一)。20世紀後半の人間増殖のピーク時と後続のピークアウト…
先日読んだ『戦後思想の到達点』収録の大澤真幸との対談で社会学者見田宗介(真木悠介)は後世に残したい仕事を七つ挙げていた。理論的なものとして『時間の比較社会学』『自我の起源』『現代社会の理論』『現代社会はどこに向かうか』の四点。その他で熱心…
古典は今現在の視点で批判しても意味はなく、それが書かれた当時の状況において、どのような問題を解決するために書かれたかを考慮しつつ読む必要があるというまっとうな指摘は記憶に残ったが、ロックのどこら辺に限界があるのかはあんまり残らなかった。ロ…
著者70歳での著述。モンテーニュの訳者、研究者としての海外調査旅行、シンポジウム参加などの様子が織り交ぜられてモンテーニュが語られている。どことなく退官記念の記念出版物のような、力の抜けた味わいがある。著者はクラシック音楽にも造詣が深く、…
『エセー』最終章「経験について」(3-13)。モンテーニュ56歳に書いたことがうかがわれる記述が見える。病を得、身体の老いも目に見えてくるなか、いたずらに抵抗することなく、自身の運命とともに人生をゆっくり歩むことを、しずかに淡々と諭すように書…
ひきつづき中央公論社『世界の名著 19 モンテーニュ』荒木昭太郎訳。 空しさについて、自分を対象にして思いをめぐらすと、空しさに暴れまわられてしまうので気をつけないといけないと思っている。充実感がないこと、無能さに目が向いてしまうことなど、こう…
2005年にNHK出版から刊行され、いまは絶版となってしまっている『道元 自己・時間・世界はどのように成立するのか』の増補改訂版の著作。全128ページの論考が231ページまで分量的にはほぼ倍増され、研究の深まり、論旨の繊細さもずいぶん増したように感じ…
敵と思うものが明確にいた。社会学者としての業績よりも、敵と思うものに対しての自身の立場の表明と抵抗こそが重要であった人生ではなかったのかなと思わせる、本人曰く「自伝ではない」、一個人の人生の社会学的資料集成であり、死の時まで推敲を重ねてい…
学恩に応えなければいけないという一世代下の大澤真幸の真っ正直な気持ちが見事に実を結んだ傑作対談集。 日本の知の世界を切り開いてきた先鋭二人の、それぞれ老い朽ちることのない孤高の歩みの根源にまで分け入ろうとする、準備の整った大澤真幸の態勢がす…
ソクラテス以前の哲学者のテクストを読んでおこうと検索してヒットした著作。はじめの210ページが廣川洋一による解説。ついで150ページが各哲学者の残存テクストの日本語訳。断片的なものから思想の核心と各哲学者の思索の違いの意味を読み取っていく…
モンテーニュの『エセー』つまみ食い資料をつくったので、自分でも利用してみる。完訳本を用意すると全部読まなくちゃいけないという圧がかかってきそうなので、抄訳本で読みはじめる。中央公論社『世界の名著 19 モンテーニュ』荒木昭太郎訳。『エセー』全…
ロールズがシジウィックの功利主義について考察している際に、否定的というか、強いられたとすれば嫌悪感をもよおすであろう人間のタイプのとして提示されたものに、逆に、自主的には望むべき人間のタイプなのではないのかと強く感じたために、ロック、ヒュ…
思うところあって、過去エントリー改修中です。 おもに引用と自分の文章の量的バランスを見ながら記事の修正と削除を行っています。 詩作品とか、どこまで引用紹介していいものかよくわからなくなったので、過去文書を振り返ってみています。 考えるきっかけ…
岩波文庫版「文選」の第二冊は、世の混乱のなかを生きる人間の憂い悲しみと超俗願望が多く歌われている。思うようにいかないなか音楽と詩歌が人の心を慰めている。 詠懐詩十七首 其一 阮籍 夜中不能寐起坐弾鳴琴薄帷鑑明月淸風吹我衿孤鴻號外野朔鳥鳴北林徘…
マイケル・サンデルの白熱教室のような討論形式の講義ではなく、オーソドックスな教授型の講義が目に浮かんでくるような講義録。特徴的なのは、ロールズの人柄がそうさせるであろうような誠実さと慎重さを基本にそえた論考の姿勢と、学生たちへ提供された資…
文選(もんぜん)。紀元前二世紀から約八百年に及ぶ中国詩文の精華。科挙の詩文制作の規範とされたこの詩文集は、収録作品についても多くは高級官僚の手になるもので、基本的に政治についての言及が内容となっている。かりに今の国政や地方行政に携わる人た…
入門書というよりも現代思想系雑誌のヘーゲル特集号の書籍化といった趣きの強い一冊。書籍としての造りのまま素直に頭から読みすすめる前に、巻末268ページの執筆者紹介を一瞥しておくことをお勧めする。編者として名の上がっている今村仁司と座小田豊以…
神獣と吉祥を象徴する動物たちをモチーフにした日本画と工芸品を多数紹介してくれる一冊。日本語英語併記のバイリンガル本(英題はAuspicious Animals - The Art of Good Omens)。めでたい動物たちと日本の職人たちの優れた技術を見ることで気分がなんとな…
モンテーニュの『エセー』の訳者毎の目次ベースのcsv形式資料。日本語訳で、つまみ食いしやすいようにするための資料。 ※2021.02.07時点では、宮下志朗、原二郎、荒木昭太郎の三訳者の訳業データで構成※宮下訳と原・荒木訳とでは第一巻の章立て配列に違いが…
モンテーニュの『エセー』の訳者毎の目次ベースの表形式資料。日本語訳で、つまみ食いしやすいようにするための資料。 ※2021.02.07時点では、宮下志朗、原二郎、荒木昭太郎の三訳者の訳業データで構成※宮下訳と原・荒木訳とでは第一巻の章立て配列に違いがあ…
二冊ともに図書館の貸し出し期間の二週間で二周半くらいづつ読んだ。個性はそれぞれ異なるが、喚起性の強い詩的言語表現をする詩人たち。この六人から何かしら影響を受けて、言葉が漏れ出てくれればと思いながら読んだのだけれど、人や物に接して行動するこ…
明治期真宗大谷派の突出した他力の宗教家たる清沢満之と、後期ストア派で奴隷出身という特異な出自を持つ哲学者「エピクテタス氏」との出会いに導かれて、エピクテトスの『語録 要録』を中央公論社『世界の名著』の抄訳で読んだ。新刊書店では中公クラシック…
現在最新の宮下志朗の一代前の『エセー』完訳者、一番流通しているであろう岩波文庫版『エセー』翻訳者によるモンテーニュの評伝。生涯と思想という括りできっちり語られているので、重量感はこちらのほうが宮下志朗『モンテーニュ 人生を旅するための7章』…