戯曲
小野小町は老いても落ちぶれたり取り乱したりする可能性は少ないと思うのだが、劇としては、若く美しい往年の姿と老いて醜い現在の姿の対比が効果的で好まれ、同趣旨の作品がいくつもつくられている。 【角田川】人商人に拐わされ死んでしまった梅若丸の霊と…
謡曲を読むと、中世は人の扱いが荒い時代だったのだなと感じさせてくれる。 【桜川】生き別れた母(狂女)と子の再会の劇 なかなかのこと花は今が盛りにて候 またここに面白きことの候 女物狂の候ふが 美しき掬ひ網を持ちて 桜川に流るる花を掬ひ候ふが けし…
題材が中国のもの(「項羽」「皇帝」)は内容も言葉も動きも野太くなるのが面白い。 【清経】入水した平清経の霊とその妻の語らいの劇 さても頼み奉り候ふ清経は 過ぎにし筑紫の戦に打ち負け給ひ 都へはとても帰らぬみちしばの 雑兵の手に掛からんよりはと思…
妄念と浄化の往復運動でこころの地固めをしているかのような感覚を味わう。上巻全30曲通覧完了。 【女郎花】行き違いでそれぞれ入水して死んでしまった小野頼風夫妻の霊と旅僧との劇 頼風心に思ふやう さてはわが妻の女郎花になりけるよと なほ花色も懐かし…
「善知鳥」のなかの「南無幽霊」という科白はなんだか衝撃的だ。南無阿弥陀仏、南無妙法蓮華経、南無大師遍照金剛と同列に南無幽霊とは普通言わないだろう。ちなみに「善知鳥」の作者は不明だそうだ。 【右近】桜葉の神と鹿島の神職との交歓の劇 げに今とて…
ワキの意識をもって、日本の古典、謡曲を読みすすめてみる。〔名ノリ〕これは諸曲一見の者にて候。 【葵上】六条の御息所の怨霊が妄執の境涯を嘆いたのち聖の加持祈祷によって調伏の後、成仏にいたる劇怨霊が出てくる場面 われ世にありしいにしへは 雲上(ウ…
浄瑠璃台本。江戸時代の人が人形芝居として楽しむことを前提にかかれている作品なので、令和の時代に初読で作品全体を味わえると思うほうが無理な話。まずはネット上にまとめられている作品梗概なども参照させていただきながら、あらすじを追うことと、理解…
世阿弥花鏡(かきょう)1424 日本の芸術論の一頂点を概観する。 段落詞書 よみ 主要部分抜き書き 一調二機三聲 いっちょうにきさんせい 調子をば機にこめて、聲を出す 動十分心動七分心 どうじゅうぶんしんどうしちぶしん 心を十分に動かして身を七分に動か…
時系列に沿うと以下の順に上演される。 〔脳内上演:名前のあるものに配役を割り振って戯曲を読んでみている〕 1.「アガメムノン」 アイキュロス作 物見の男 合唱隊(コロス) 報せの使い クリュタイメストラ(アルゴスの王妃):小泉今日子 タルテュピオ…
時系列に沿うと以下の順に上演される。キャストは脳内上演用(私的チョイス)。 制約ある人間界での自分の責任の取り方は、自裁という形でしか成就できないのかと心ざわめく感があるが、死者それぞれの最期の姿は記憶に留め置くだけの衝撃がある。 死に向き…
ピロストラトス 英雄が語るトロイア戦争 www.heibonsha.co.jp 訳:内田次信 ホメロスとオデュッセウスに対する批判がベース。トロイア戦争の別視点からの対話劇形式による報告。 ホメロスの関心はアキレウスとオデュッセウスにばかりに集中していたので戦の…
ロバート・フロストフロストの仮面劇編訳:飯田正志 仮面劇として書かれているが、通常のドラマとしての配役を考えながら読んでみた。 道理の仮面劇 A Masque of Reason (1945). 神 ヨブ ティアティラ、ヨブの妻 悪魔(サタン) 「ヨブ記」から発想された「…
デレク・ウォルコットオデッセイ訳 谷口ちかえ1993 www.kokusho.co.jp 英国のロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの委託により作成。ホメロス『オデュッセイア』のパロディ。「廃物となった石油のドラム缶を輪切りにして天板にチューニングして創ったステ…
サミュエル・ベケットベスト・オブ・ベケット3しあわせな日々/芝居白水社 (1991/01) 近頃新しい訳者による新しい組み合わせの戯曲集(新訳ベケット戯曲全集1,2)も出ているようですが、手元にあるのは1991年出版の旧版です。キャストをつけて脳内上演を試み…