読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

日本の近現代詩

ヨネ・ノグチ『詩集 明界と幽界』(原著 Seen and Unseen: or Monologues of a Homeless Snail 1896, 彩流社 対訳詩集 2019)

野口米次郎の第一詩集'Seen and Unseen: or Monologues of a Homeless Snail'は移民渡航後三年目にしてアメリカで現地出版された英語の詩集。日本人の神秘的精神性に興味を持たれたのと、ネイティブが使用しないような言葉や変わった造語を用いたことが新鮮…

Yone Noguchi 'SEEN & UNSEEN' と野口米次郎『明界と幽界』 比較資料 (野口米次郎再興活動特別編 001)

二重国籍、二重言語であるがゆえに日本と西洋との橋渡し的存在となり得た日本近代詩黎明期の詩人、二重化の上にそれぞれ残った野口米次郎とYone Noguchi。 同時代的には、インドのタゴールが英語とベンガル語の二重言語を使用し、1913年には『ギタンジャリ(…

堀まどか『野口米次郎と「神秘」なる日本』(和泉書院 2021)

20世紀への転換期にあたる時期、野口米次郎(ヨネ・ノグチ)の詩人・文化人としての前半生と、極東日本の神秘性を期待して無名のノグチを受容していった英米の文化芸術層の様子をコンパクトにまとめあげた興味深い一冊。 世紀末思想、アメリカのフロンティ…

新倉俊一編集『西脇順三郎コレクション』Ⅰ・Ⅱ 詩集(慶應義塾大学出版会 2007年) 中高年の鈍重さを背負いつつ底抜けてしまった稀有な日本の近代詩人

西脇順三郎の詩作の大部分を収める選集。晩年の詩作にふれることは編集方針上できないが、『宝石の眠り』まで、著者70歳までの詩作品を完本収録していることに意義がある個人選集。 個人的には詩的表出のタガがどこかはずれたと想定される『宝石の眠り』以…

杉本秀太郎『伊東静雄』(筑摩書房近代日本詩人選18 1985, 講談社文芸文庫 2009)

書名は『伊東静雄』となっているけれども、詩人の評伝ではない。作品論、それも詩人の第一詩集『わがひとに与ふる哀歌』一冊のみの作品構成を読み解く日本ではまことに珍しい著作になっている。全28篇を冒頭掲載作品から順追って掲載解説している本書を読…

岩波文庫『伊東静雄詩集』から「八月の石にすがりて」

ここ数年、年に数回『伊東静雄詩集』を読んでいる。心がざわついているときに読むと、どういうものかそのざわつきから距離を置くことができるようになるので、なんとなく手に取る回数が多くなっている。今年は引越しの前後にわりとよく読み、そして先ほど、…

新潮社 日本詩人全集24『金子光晴・草野心平』(新潮社 1967)

戦前戦中戦後を貫いて日本語の詩に身を捧げた草野心平と金子光晴のカップリング。 強烈。 詩作品だけでも強烈なのだが、貧乏ななかで飲み食い生活しているところの人物としての二人の精神状況はさらに強烈。一緒に生活しろと言われたら、かなりつらい人たち…

嶋岡晨編 日本の詩『草野心平』(ほるぷ出版 1975)

青年期の作品から中年期を経て老年期の作品まで万遍なく採られた本詩選集は、詩人の歩みにおいて変わらないものと変っていくものをふたつながらたどり、言葉を書きながら生きることもある人間のひとつの軌跡を描き出している。嶋岡晨の選による暦年形式の詩…

思潮社現代詩文庫『草野心平詩集』(思潮社 1981)

吉原幸子の編集構成になる草野心平詩選集。発行詩集暦年方式とは全く異なる構成をもつので、ほかの詩選集とは一線を画している。そのため、よく取り上げられる代表的詩作品もすこし違った印象が新たに出てくるし、近くに配置されている詩にもより親しみや感…

草野心平 詩集『自問他問』(筑摩書房 1986)

1974年の『凹凸』からはじまった年次詩集第十二作。八十二歳で刊行された本書が生前最後の詩集となった。全31篇。三度の入院生活を送ったなかでのすべて新作の作品集。さすがに一歩一歩の歩みをたしかめながら進まざるをえない詩作の道ではあるが、人々へ…

草野心平 詩集『幻象』(筑摩書房 1982)

草野心平、七十八歳が詠いあげた詩境。 心の動きの必要条件たる身体の状態は惨憺たるものながら、身体条件に屈するわけにはいかない歴史的背景をも持った詩人の精神性が、あるかなきか、たえず惑わせつつある詩的空間に向けて渾身の言葉を放つ。 本書を構成…

入沢康夫編『草野心平詩集』(岩波文庫 1991)

日本近現代詩において視覚詩とフィクション形態の連詩という観点からみると、岩波文庫で草野心平の詩選集の編纂したのが入澤康夫(岩波文庫の表記は新字だけれど旧字の入澤康夫のほうがしっくりくる)だということに大いに納得がいった。宮沢賢治の研究評価…

彌生書房 世界の詩36 田村隆一編『草野心平詩集』(彌生書房 1966)

草野心平の七九歳から八十歳にかけての詩を収めた詩集『玄天』(1984)で何かに撃ちぬかれたような感覚を持ってから、草野心平の詩選集を複数入手して、順次浸っている。本書は一世代後の「荒地」を代表する詩人田村隆一が、1966年という時代において選…

未来社 シリーズ 転換期を読む28『蒲原有明詩抄』(未来社 2021)

日本近代詩黎明期に活躍した象徴派の詩人、蒲原有明。青空文庫でも読めるような明治期の詩人の詩選集が、立派なつくりの紙の新刊本で出ているのを見ると、何ごとかと思う。刊行者がどんな意図をもって仕掛けてきたのかを探ってみたくもなる。このシリーズで…

思潮社現代詩文庫『尾形亀之助詩集』(思潮社 1975)つまづく石でもあれば私はそこでころびたい

「つまづく石でもあれば私はそこでころびたい」は第三詩集の巻頭に置かれた言葉。この時、尾形亀之助三十一歳。生前刊行した最後の詩集で、その後十二年、今現在もつづく日本の代表的詩誌「歴程」の同人になって詩を発表することもあったが、餓死による自殺…

思潮社現代詩文庫 38『中桐雅夫詩集』(1971)「防御としての生の持続と緊張」のなかから生まれたリリカルでメランコリックな詩

自身の詩集の編集を任せるなど関係の深い長田弘が、本詩選集においても詩と詩論の選定と構成さらには作品論も担当している。また、詩人論は「荒地」同人の鮎川信夫が親愛を込めて綴っており、作品も人物も深く愛された詩人であることが伝わってくる。 年長の…

中桐雅夫 詩集『会社の人事』(晶文社 1979)

80歳の草野心平が詩集『玄天』で年少の詩人の追悼詩を書いていた。中桐雅夫、享年63。日の暮れる前からアルコールを飲んでいたことがうかがわれる内容で、気になって詩集を探して読んでみた。生前最後の詩集になってしまった本書『会社の人事』は、還暦…

鍵谷幸信編 日本の詩『西脇順三郎』(ほるぷ出版 1975)

ほるぷ出版の西脇順三郎詩選集。『ambarvalia』と『旅人かへらず』が全篇収録されているのが特徴。今回は『旅人かへらず』全篇読むことが主眼。日本的シュルレアリスムの詩集『ambarvalia』から後退したと捉える読み手もいる『旅人かへらず』であるが、淋し…

谷川俊太郎『ミライノコドモ』(岩波書店 2013)

谷川俊太郎82歳で刊行された新作詩集。全27篇。 注文を受けずに書いて、未発表のまま本書にはじめて収録された作品が10篇、不詳の作品が2篇と、純粋に能動的に書かれたものが多く収められていて、そのためもあってかどことなく素っ気ないナマ感のすこ…

草野心平 詩集『玄天』(装丁も著者 筑摩書房 1984)

ケルルン クック。 るるるるるるるるるるるる・・・ 蛙の詩人、草野心平の七九歳から八十歳にかけての詩を収めた詩集。 朝の血達磨は太平洋の水平線から。スルリせりあがり。不盡山巓の雪は。淡いバラ色。(「不盡の衣裳」部分) モダンかつ幻妖な詩句。旧字…

那珂太郎編『西脇順三郎詩集』(岩波文庫 1991)

多作の詩人のアンソロジーで、読者側に立つものが困るのは、詩集完本が収められることが少なく、ひとつの刊行物としての或る詩集が持つ全体としての力が分かりにくくなってしまっているということである。 西脇順三郎は生前十四冊の詩集を刊行している。生存…

西脇順三郎 詩集『人類』(吉岡實装丁 筑摩書房 1979) 瓢箪、ヒョウタン、ひようたん

西脇順三郎85歳での最後の詩集。1970年以降の作品を集めたものというから70代後半からの作品が収められている。全66篇。創作のエネルギーが落ちることなく作品に凝縮されているところがすばらしい。 戦後初の詩集『旅人かへらず』で「淋しく感ずる…

西脇順三郎 詩集『宝石の眠り』(吉岡實装丁 花曜社 1979) 茄子、ナス、なす

1958年から1968年までノーベル賞候補にもなった西脇順三郎の1963年刊行の筑摩版全集編纂時の未刊行詩篇を集めた詩集。拾遺詩篇という範疇にあるにもかかわらず、一篇一篇の質の高さと、詩人の内なる詩魂の一貫性が読み手に伝わる一冊となってる…

高橋睦郎『鷹井』(筑摩書房 1991)

多才な高橋睦郎の手になる新作能。能の試みとして1921年に書かれたイエーツの戯曲『鷹の井戸にて』をベースに、1990年の公演用に翻案・リメイクを委嘱され作成された作品。アイルランドの詩人の作品を伝統的な謡曲の構造、文体にどこまで近づけられ…

堀田善衞『若き詩人たちの肖像』(新潮社 1968, 集英社文庫 1977)

1936年(昭和11年)の二・二六事件前夜から1943年(昭和18年)11月15日召集の召集令状が届くまでの予科を含めて大学生活約8年間を描いた自伝的長編小説。 父の代で家が没落してしまった北陸の廻船問屋に生まれ育ち、北陸旧家に受け継がれて…

富山県高志の国文学館編『堀田善衞を読む 世界を知り抜くための羅針盤』(集英社新書 2018 著者:池澤夏樹, 吉岡忍, 鹿島茂, 大高保二郎, 宮崎駿)

『方丈記私記』『定家明月記私抄』『ラ・ロシュフーコー公爵傳説』『別離と邂逅の歌』『堀田善衞詩集 一九四二~一九六六』と堀田善衞の作品を読みすすんできて、次は何を読もうかということと、他の人はどんな風に読んでいるのかを知りたくて手に取った一冊…

詩人としての堀田善衞 その2『堀田善衞詩集 一九四二~一九六六』(集英社 1999)

戦時中の雑誌掲載作品から、「広場の孤独」で1951年下期の芥川賞をとり、本格的に小説を書きはじめるまでの、1950年代初頭までの雑誌掲載作品を中心に集められた、没後刊行の拾遺詩集。 死に囲まれた絶望と哀しみから、冷たく静かで深い怒りを経て、…

詩人としての堀田善衛 その1『別離と邂逅の歌』(作品執筆時期 1937-1945, 編纂草稿 1947, 集英社刊 2001)

遺稿整理から発見された、第一次戦後派作家というようにも分類される作家、堀田善衛の、主に戦中の20代に書かれた詩作品。死と隣り合わせに生きていた世界戦争の時代における、生々しい精神の記録としても、読み手の心に響いてくる詩作品。 大学時代から、…

谷川俊太郎『東京バラード、それから』(幻戯書房 2011)

谷川俊太郎の写真60葉と詩作品90篇。 80歳の時の一冊。 写真は50年代、60年代のもの。東京タワーの建設中の風景を含むモノクロームの写真。 詩は、10代後半のものから書下ろしを含む刊行当時のものまでの60数年からのピックアップ。 バラード…

草間彌生詩集『かくなる憂い』(而立書房 1989)と私の今日このごろ

2021年、11月を迎えた。 なんだかびっくりだ。 年の終わりを迎える準備なんかまったくできていないし、新たな一年なんてものも、ぜんぜん視野に入ってこない。 仕事的には怒涛の10月後半があって、まだその余韻から抜け切れていないでいる。 久方ぶ…