読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

浮世絵

浅野秀剛『ARTBOX 鈴木春信』(講談社 2017)

浮世絵師鈴木春信の活動期間は1760年の数え36歳から1770年に46歳で亡くなるまでの約10年間で制作点数は1000点を超える。本書にはそのなかから116点の浮世絵がカラー図版で収められている。書籍のサイズがA24取(140×148)と小さめのた…

田辺昌子『鈴木春信 江戸の面影を愛おしむ』(東京美術 2017)

B5判の判型に鈴木春信作品87点、比較対照用の春信以外の作者の作品20点を収めた解説本。野口米次郎や宮沢賢治が鈴木春信の浮世絵にインスパイアされて作成した詩などの紹介もあり、春信作品の特色と受容の歴史などに目配せが効いている。また使用された…

監修:山下裕二+マンガ:マキゾウ 『マンガで教養 やさしい日本絵画 ―一生ものの基礎知識―』(朝日新聞出版 2020 )

ColBase 国立博物館所蔵品統合検索システム(URL:https://colbase.nich.go.jp/?locale=ja )というものの存在を教えてくれた一冊。作品画像がないものが少なくないが、検索して作品画像が利用できるというところは素晴らしい。公営美術館全般に広げてくれた…

金子信久『鳥獣戯画の国 たのしい日本美術』(講談社 2020)遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん

鳥獣戯画を中心に、伊藤若冲、歌川国芳、河鍋暁齋、曽我蕭白、森狙仙など、小さな動物や虫たちが躍動する日本画の世界に案内してくれる一冊。優美で瀟洒な線と淡くて品の良い彩色が心を和ませてくれる。兔と蛙と雀と金魚。猫と鼠と猿と亀。祭りと遊興に励む…

矢島新『日本の素朴絵』(PIE International 2011)と『葛飾北斎 世界を魅了した鬼才絵師』(河出書房新社 2016)

日本美術の本を二冊。 矢島新『日本の素朴絵』は、先日読んだ金子信久『日本おとぼけ絵画史 たのしい日本美術』の流れで、精緻さや厳密さにはに向かわない趣味嗜好にもとづく絵画表現の紹介本として参照してみた。第一章の作者が誰かよくわからない「絵巻と…

高畑勲『一枚の絵から 日本編』(岩波書店 2009)日本のアニメの巨匠の眼を借りて観る日本の絵画と工芸品

高畑勲は言わずと知れた日本のアニメータ。私は彼の手掛けたテレビアニメを再放送で見た世代。『アルプスの少女ハイジ』『フランダースの犬』『母をたずねて三千里』など。個人的にいちばん高畑勲っぽいなと感じるのは『じゃりン子チエ』か。映画だと『ホー…

辻惟雄『日本美術の歴史』(東京大学出版局 2005)瑞々しい図版と読ませる文章でおくる辻版日本美術史

書店(BOOKOFFだけど)で手に取って棚に戻さなかったのは、図版のたたずまいがキリっとしていてチョイスもどことなく変わっていたため。表紙も横尾忠則デザインで只者ではなさそうな雰囲気はあったが、橋本治の『ひらがな日本美術史』にも通じるところのある…

永田生慈『もっと知りたい葛飾北斎 生涯と作品』改訂版(2019)

画狂老人卍、葛飾北斎、享年90。75歳の時に書いた、絵本「富嶽百景」初編の跋文がいかしている。 己(おのれ)六才より物の形状(かたち)を写(うつす)の癖(へき)ありて 半百の此(ころ)より数々(しばしば)画図を顕(あらわ)すといえども七十年…

永田生慈『浮世絵八華5 北斎』(1984)

図版63点に狂歌絵本『隅田川両岸一覧』と『潮来絶句集』が完本収録されている。三十代半ばで勝川派を去ったのちの壮年から老年にかけてのとどまることを知らない画業の営みはまさに圧巻。七十歳になって傾注した錦絵の「富嶽三十六景」をへて、七十五歳ご…

太田記念美術館監修、日野原健司解説『ようこそ浮世絵の世界へ An Introduction to Ukiyo-e, in English and Japanese』(2015)

図版の数は比較的少ない感じがするが、少ないなかで絵師の魅力を最大限に伝えている。選択の妙が味わえる。特に喜多川歌麿の繊細な線の良さが感じられる一冊となっているように思えた。「富本豊ひな」「歌撰恋之部 物思恋」「逢身八景 お半長右衛門の楽顔」…