読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

科学

ヘイゼル・ミュアー『1分間サイエンス 手軽に学べる科学の重要テーマ200』(原書2011, SBクリエイティブSi新書 2019)

科学全般の雑学取得と保有知識のチェックに便利。図をじっと見て、想いにふけなければ1テーマを1分でチェック可能。職業柄最終章の「IT」がいちばんリアルに気になる。 ・遺伝的アルゴリズム・量子コンピュータ・ホログラフィックメモリ・分散コンピューティ…

福岡伸一『フェルメール 光の王国』(木楽舎 2011)

1632年、オランダ。フェルメールとスピノザが生まれたオランダ、デルフトでもうひとり、光とレンズの世界に没入する人物がいた。アントニ・ファン・レーウェンフック。顕微鏡の父、微生物の発見者。福岡伸一はフェルメールの『地理学者』『天文学者』のモデ…

竹内薫『「ファインマン物理学」を読む 普及版 力学と熱力学を中心として』(講談社ブルーバックス 2020)

サイエンス作家竹内薫がガイドする「ファインマン物理学」への手引き書。三分冊のうちの最終巻のようだが、「ファインマン物理学」の原書第1巻は「力学」、第2巻が「光・熱・波動」ということなので、こちらから読みはじめた。 ファインマン自身の魅力に加…

山田克哉『 E=mc2のからくり エネルギーと質量はなぜ「等しい」のか』(講談社ブルーバックス 2018)

恥ずかしながら「光子はエネルギーを持っているのに質量がゼロとはどういうこと?」と理系世界では常識レベルかも知れないことをずっと疑念に思ってきたのだが、本書ではじめて腑に落ちた。「電子対創生」。いままで読んだことはあったかも知れない。でも、…

イリヤ・プリゴジン + イザベル・スタンジェール『混沌からの秩序』(原書 1984, みすず書房 1987)

世界の再魔術化、魅惑の世界の再来ということに関してモリス・バーマンは「デカルトからベイトソンへ」という線を引いた。イリヤ・プリゴジンはバーマンとはまた別の視点から複数の魅力的な線を引いている。 ディドロ、カントからホワイトヘッドへ 独立体か…

佐藤勝彦 監修『図解雑学 量子論』(ナツメ社 2001)

初歩の初歩、入門中の入門の書みたいな体裁をとっているにもかかわらず、具だくさん。しかもきっちりと味付けがしてあって、うまさを感じる。見開き2ページでひとつのトピックを扱っていて、右に図解、左に解説文で、数式が理解できないひとに向けても、し…

スティーヴン・ホーキング+レナード・ムロディナウ『ホーキング、宇宙のすべてを語る』(原書2005, 訳書2005)

物理学者にとっては宇宙のモデルとして数式のほうがリアルなんだろうが、一般読者はその数式から導き出されるイメージを自然言語に翻訳してもらわないことには悲しいことに何もわからない。本書はホーキングとムロディナウによって一般層になるべくわかりや…

モリス・バーマン『デカルトからベイトソンへ 世界の再魔術化』(原書1981, 訳書1989, 2019)

近代における世界の脱魔術化が引き起こした硬く冷めた知の世界を、魅力あふれる高度に科学的な魔術化した知の世界へ。帯を書いた落合陽一や解説のドミニク・チェン、さらには訳者の柴田元幸にも大きなインパクトを与えた著作ということで、楽しみに読んだの…

栃内新+左巻健男 (編著)『新しい高校生物の教科書 現代人のための高校理科』 (講談社ブルーバックス 2006)

科学は日々進歩しているため、最新の学説を取り込むほど内容は面白くなってくる。ただ、理解ができないほど難しいと困ってしまうのだが、本書は執筆者の努力と熱量とで、生物についての興味が持続し、ほぼ書かれている情報をそのまま享受することができる。…

湯川秀樹・梅棹忠夫『人間にとって科学とはなにか』

京風アレンジのきいた味わい深い科学系文化雑談。ふたりともにペシミスティック、且つ老荘思想を愛好する科学者で、その居心地の悪そうなポジションからの発言が、五〇年後の今でも強い浸透力を保っている。 普通の性能の自動車をつくることにくらべると、安…

吉田武『虚数の情緒 中学生からの全方位独学法』(2000)

名著。虚数を通して量子力学の世界にも手引きしてくれていて、お得。先日科学哲学の入門書で何の説明もなしに出てきて困った「虚時間」や「ファインマンの経路積分法」についても紹介があり、さらに興味付けもしてくれて大変ありがたい。千頁の大冊だが19年…

森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』(2010)

実用的な科学哲学入門書。理系研究者が実際の研究をするにあたって知っておくべき科学哲学がコンパクトにまとまっている。文系の人間にも読めないわけではないが、各トピックに顔を出す科学理論については知らないことが多い。虚時間って何? 未知の世界の端…

アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド『観念の冒険』(1933 Adventures of Ideas, 中央公論社 世界の名著58収録の抄訳)

全体の三分の一程度の抄訳なので、ホワイトヘッドの科学哲学者としての側面の入門として気軽に読んでみる。ちょっと齧った感じでは、なんとなくヒュームの影響が強そうだ。イギリス経験論の系統にもつらなるのかも。 農業は、近代的文明への決定的な第一歩を…

福岡伸一『世界は分けてもわからない』(2009)

「世界は分けてもわからない」といえるには、分けて考えてきた蓄積を知っていることも重要で、その上で、零れてしまうものにも感度を高くしなくてはならない。 生命現象において、全体は、部分の総和以上の何ものかである。この魅力的なテーゼを、あまりにも…

日高敏隆『動物と人間の世界認識 ― イリュージョンなしに世界は見えない』(2003、2007)

著者が翻訳紹介した、ユクスキュル、ローレンツ、ドーキンスの理論をベースに展開される科学エッセイ。知覚の枠の異なる種ごとに世界がイリュージョンとして生み出されている、という主張。ユクスキュルの環世界の考え方が柱になっている。 たとえば、モンシ…

福岡伸一『芸術と科学のあいだ』(2015)

日本経済新聞に連載された芸術よりのコラムの書籍化。フェルメール愛が突出している。 芸術と科学のあいだに共通して存在するもの、それは今も全く変わっていない。この世界の繊細さとその均衡の妙に驚くこと、そしてそこにうつくしさを感じるセンスである。…