読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

美術

高畑勲『十二世紀のアニメーション ― 国宝絵巻物に見る映画的・アニメ的なるもの ― 』( 徳間書店 1999 )

絵巻四作品の全篇に拡大部分図、関連図版を配置して二十世紀のアニメーター高畑勲が絵と詞とが融合した日本に特徴的な表現を読み解いていく。絵巻全篇が省略されることなく掲載されることで、配置の妙や運動感、空間造形の深さがよりよく味わえる。美術館に…

監修:山下裕二+マンガ:マキゾウ 『マンガで教養 やさしい日本絵画 ―一生ものの基礎知識―』(朝日新聞出版 2020 )

ColBase 国立博物館所蔵品統合検索システム(URL:https://colbase.nich.go.jp/?locale=ja )というものの存在を教えてくれた一冊。作品画像がないものが少なくないが、検索して作品画像が利用できるというところは素晴らしい。公営美術館全般に広げてくれた…

森村泰昌『手の美術史 MORIMURA METHOD HANDS & FINGERS IN ART MASTERPIECES』(二玄社 2009)不気味の谷にあえて足をかける作家、うろたえる鑑賞者

名画に描かれた手の部分200点を切り出して、手の表現力に眼を向けさせる一冊。顔と手は衣服をまとわないがゆえになまめかしいというところから、絵画の中の手を凝視する。一通り手のクローズアップを解説付きで通覧したあと、176ページ以降に掲載作品…

小林瑞恵『アール・ブリュット 湧き上がる衝動の芸術』( 大和書房 2020 )安心を得るための行為の成果

「生(き)の芸術」と訳されている「アール・ブリュット」。正式な美術教育を受けていない製作者たちの美術作品であり、「アウトサイダー・アート」とよばれる場合もある。日本においては精神の病を抱えている人たち、知的障害を持つ人たちの作品を指すこと…

杉本博司『苔のむすまで』(新潮社 2005)荒ぶる魂の沈思黙考

写真家であり現代美術作家である杉本博司の第一著作。固定したカメラで長時間露光した作品や模造品の写真作品を作成してきた作家のコンセプト部分がうかがえる一冊。写真図版も多く含まれているので杉本博司入門にもなる。 私が写真という装置を使って示そう…

金子信久『鳥獣戯画の国 たのしい日本美術』(講談社 2020)遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん

鳥獣戯画を中心に、伊藤若冲、歌川国芳、河鍋暁齋、曽我蕭白、森狙仙など、小さな動物や虫たちが躍動する日本画の世界に案内してくれる一冊。優美で瀟洒な線と淡くて品の良い彩色が心を和ませてくれる。兔と蛙と雀と金魚。猫と鼠と猿と亀。祭りと遊興に励む…

矢島新『日本の素朴絵』(PIE International 2011)と『葛飾北斎 世界を魅了した鬼才絵師』(河出書房新社 2016)

日本美術の本を二冊。 矢島新『日本の素朴絵』は、先日読んだ金子信久『日本おとぼけ絵画史 たのしい日本美術』の流れで、精緻さや厳密さにはに向かわない趣味嗜好にもとづく絵画表現の紹介本として参照してみた。第一章の作者が誰かよくわからない「絵巻と…

宮下規久朗『<オールカラー版> 美術の誘惑』(光文社新書 2015)悲しみを背負いながらの瞳の愉楽と鎮魂

宮下規久朗の著作を読むに関しては、不純な動機が働いている。予期せぬ時期に、突然準備なしに愛する娘さんを失って、中年にいたるまで本人を突き動かして来たであろう人生や仕事に対する価値観が、一変に崩れてしまった一表現者の仕事。現代の日本美術界に…

金子信久『日本おとぼけ絵画史 たのしい日本美術』(講談社 2000)おとぼけをぼけずに見つめる幸せな時間

美の中心地域の美の中心をはずれたところに存在する日本独自の美のすがた。ゆるい、あまい、にがい、変態。正統と正面から闘う必要がないところで棲み分けができた日本の懐の深さというかだらしなさ。柄谷行人が『帝国の構造 - 中心・周辺・亜周辺』で示した…

森村泰昌『まねぶ美術史』(赤々舎 2010)若年:苦味という感覚の味わいの深さ

近現代美術界。商業的にひとりの美術家が成功すると、その周りにいたひとたちも同時に注目されるようになり、すこし潤う。知られず見られることもなかった状況から、共に見られる状況にすこし変わる。それぞれの作家への深入りは、あったりなかったりで、必…

内山淳一『めでたし めずらし 瑞獣 珍獣』(PIE International 2020)日本の伝統美の技術に酔う

神獣と吉祥を象徴する動物たちをモチーフにした日本画と工芸品を多数紹介してくれる一冊。日本語英語併記のバイリンガル本(英題はAuspicious Animals - The Art of Good Omens)。めでたい動物たちと日本の職人たちの優れた技術を見ることで気分がなんとな…

『原色明治百年美術館』(朝日新聞社 1967)西洋絵画以外の伝統を持つ国の美術界の歴史 混ざると変わる

市場にはほとんど出回っていない書籍。興味があったら図書館で借りて観て、という一冊。 明治期の日本画と洋画の激動と受容を、傍観者的立場でも微かに通覧し、追体験することができる資料的価値の高い書籍。 日本画と洋画があることで生じた苦悩と豊饒。混…

森村泰昌『「美しい」ってなんだろう 美術のすすめ』(理論社 よりみちパン!セ 2007)美術家という変わった職業の内幕を覗く

かつて理論社の「よりみちパン!セ」ホームページで連載されていたものの書籍化。中高生を中心に美術の見方をレクチャーする一冊。「西洋美術史になった私」「日本美術史になった私」「女優になった私」など過去の絵画作品や人物に扮したにセルフポートレイ…

佐々木健一『美学への招待 増補版』(中公新書 2004, 2019) デュシャンのレディーメイド以降の美の世界をちゃんとうろつきたい市民層のためのガイド

お金は持っていないので購入という究極の評価の場には参加できないし、技術もコンセプトもないため供給側に立つこともできないけれども、なんとなく美術は好きという人のために書かれた美についての現代的な理論書。 センスなんてものは自分に一番しっくりし…

高畑勲『一枚の絵から 海外編』(岩波書店 2009) 先行作品との出会いがつくり出すあらたな制作欲に出会う時間

日本編と同時発刊の海外編。一冊での刊行であれば編集も変わってきたであろうが、日本で500ページ超の書籍を刊行するのは相当難しいことなのだろう。収録エッセイはスタジオジブリの月刊誌『熱風』におけるおもに絵画作品に関する連載がベースになってお…

高畑勲『一枚の絵から 日本編』(岩波書店 2009)日本のアニメの巨匠の眼を借りて観る日本の絵画と工芸品

高畑勲は言わずと知れた日本のアニメータ。私は彼の手掛けたテレビアニメを再放送で見た世代。『アルプスの少女ハイジ』『フランダースの犬』『母をたずねて三千里』など。個人的にいちばん高畑勲っぽいなと感じるのは『じゃりン子チエ』か。映画だと『ホー…

辻惟雄『日本美術の歴史』(東京大学出版局 2005)瑞々しい図版と読ませる文章でおくる辻版日本美術史

書店(BOOKOFFだけど)で手に取って棚に戻さなかったのは、図版のたたずまいがキリっとしていてチョイスもどことなく変わっていたため。表紙も横尾忠則デザインで只者ではなさそうな雰囲気はあったが、橋本治の『ひらがな日本美術史』にも通じるところのある…

【中井正一を読む】02. 木下長宏『[増補] 中井正一 新しい「美学」の試み』(平凡社ライブラリー 2002)美を足掛かりにした現実の濁流への抵抗

抵抗者という視点から中井正一を語った一冊。理論的な骨格を描き出した「委員会の論理」(1936)とそれを広範に向けて拡張展開した「美学入門」(1951)を中心に中井の弁証法的唯物論を核に据えた論考を読み解いている。 中井正一が『美学入門』のなかで展開…

『間の本 イメージの午後 対談:レオ・レオーニ&松岡正剛』(工作舎 1980)「未知の記憶」と「宇宙的礼節」を呼び寄せる輝かしい対談の記録

The Book of MA 『平行植物』の日本語版刊行を機縁に、発行元の工作舎の編集長である若き松岡正剛(当時36歳)とレオ・レオーニ(当時70歳)の間で執り行われた鮮烈な対談の記録。松岡正剛がレオ・レオーニから貴重な言葉を引き出そうと全力でもてなし、…

藤田治彦『もっと知りたい ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ』(東京美術 2009) ブルジョア出身で贅沢品作成に才能のある芸術家が取り組んだ社会主義への夢

ウィリアム・モリスは世界を美しくしようとした。美しさへの才能が開花したのは著述の世界と、刺繍や染色、カーペット、カーテン、壁紙、タペストリーなどのテキスタイル芸術。 目指すのは争いも苦痛も失敗も失望も挫折もない、人々の趣味道楽だけでうまく回…

井上宏生『<ビジュアル選書> 一遍 遊行に生きた漂泊の僧 熊野・鎌倉・京都』(新人物往来社 2010)決定往生の安心を説き与えつづけた遊行の僧

唐木順三が著書『無常』において高く評価していた一遍が気になり、入門書を手に取る。いずれも「捨てる」ことを説いた鎌倉新仏教の開祖のうち、寺を持たず、捨てようとする心も捨てるにいたったという一遍が、捨てるということにおいてはもっとも徹底してい…

マックス・エルンスト『百頭女』(原書 1929, 巖谷國士訳 1974, 河出文庫 1996)切り貼りから生まれる切断と融合、新世界創造の痛みを伴ったエネルギー

マックス・エルンストのコラージュ・ロマン第一弾『百頭女』。複数の重力場、複数の光源、複数のドレスコード、複数の遠近法、複数の世界が圧縮混在する147葉のコラージュ作品とシュルレアリスム的キャプションから成る出口なしの幻想譚。二作目の『カル…

マックス・エルンスト『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』(原書 1930, 巖谷國士訳 1977, 河出文庫 1996)どこか高貴さを感じさせるシュルレアリスム的エログロナンセンスのテキストとイラスト

「たいていの本はうしろから読むのがよい」というのは、カフカを語った時のピアニスト高橋悠治のことば。関心はあるのに、あまり身にはいってこない作品に出会ったときに、たまに私が実践してみる本の読み方。マックス・エルンストのコラージュ・ロマン『カ…

ペル・ジムフェレール『<現代美術の巨匠> MAX ERNST マックス・エルンスト』(原書 1983, 美術出版社 椋田直子訳 1990) 多くの技法と作風を持つシュルレアリスムの代表的画家

先日、マックス・エルンストのコラージュ・ロマン三部作の第二作『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』を読んだものの、コラージュ・ロマンというものに対する理解があまりなかったものだから、本業の絵画作品に触れてみることにした。コラージュ・…

『別冊太陽 気ままに絵のみち 熊谷守一』(平凡社 2005)不思議なあたたかさをもつ絵画の世界

クマガイモリカズ、明治十三 1880 ─ 昭和五十二 1977。「海の幸」の明治の日本洋画家である青木繁の二歳年長で、東京美術学校では同級で親友でもあったが、熊谷守一の方は戦後の作家という印象が強い。全168ページに多数の図版が収録されているが、その多…

宮下規久朗『モチーフで読む美術史2』(ちくま文庫 2015) 喪失者による虚飾のない仕事。人の心を動かす美術の力へのまなざし。

2013年の『モチーフで読む美術史』につづく文庫版オリジナル著作第二弾。あらたに50のモチーフから美術作品を読み解いていく、小さいながらも情報量の多い作品。 著者である宮下規久朗は、前作『モチーフで読む美術史』の校了日に一人娘を22歳の若さ…

ゲオルク・ジンメル『ジンメル・エッセイ集』 川村二郎編訳 (平凡社ライブラリー 1999)アドルノやベンヤミンに影響を与えたエッセイのスタイルと切れ味の良い文章

哲学者・社会学者としての論文や講義録にもジンメル節と言っていいようなことばの選択が匂い立つことはままあるのだが、一般読者層に向けて書かれたジンメルの哲学的エッセイは文化や芸術を鮮やかに扱っていて、より一層書き手の個性が際立って、文章自体が…

門屋秀一『美術で綴るキリスト教と仏教 有の西欧と無の日本』(晃洋書房 2016)キリスト教の宗教画と日本の禅画を比較しながら最終的には西田幾多郎の哲学の核心にせまろうとする著作

美術の棚にあったけれど、著者自身があとがきで書いているように宗教学の本。出版社のサイトにもジャンルは哲学・宗教学と書いてあったので、美術の歴史や技巧や洋の東西の美術的な差異などについての記述を期待していると裏切られる。宗教画や禅画の図版は…

宮下規久朗『モチーフで読む美術史』(ちくま文庫 2013) とりあわせにも著者の魂がこもる一冊。たとえば蝶はジェラール「クピドとプシュケ」応挙「百蝶図」コールテ「セイヨウカリンと蝶」

見開き2ページのコラムにカラー図版2ページの体裁で、66の絵画モチーフについて取り上げた美術書。1000円を切った価格で、ほぼすべての図版がカラーというのはとても贅沢。コラムには絵画モチーフについての基本的な情報と、モチーフにまつわる雑学…

【ジンメルの社会学を読む三連休】03.寝落ちで連休終了 大作1件読了も始まり感のほうが大きい

18:30、『社会学』下巻読了後、食料品買い出し、夕食、晩酌。『文化論』読みながら21:00くらいに寝落ち。4:30くらいに目が覚める。予定の90%くらいの進捗だが、なんとなく満足しているような幸福感とともに目覚める。めずらしい。自己満足…