読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

美術

イヴ・ボヌフォワ『ジャコメッティ作品集 ―彫刻・絵画・オブジェ・デッサン・石版画―』(原著 1991, 訳:清水茂 リブロポート 1993 本体37500円)

20世紀のフランスを代表する詩人のひとりイヴ・ボヌフォアの重厚なテクストとともにアルベルト・ジャコメッティの生涯と創作の軌跡をたどることができる充実した作品集。 本書は20年ほど前に池袋西武の三省堂美術洋書コーナーにて9000円くらいで購入…

矢内原伊作『完本 ジャコメッティ手帖 Ⅰ』『完本 ジャコメッティ手帖 Ⅱ』(みすず書房 2010)

矢内原伊作がジャコメッティに出会いはじめてモデルとなった1955年から最後にモデルをつとめた1961年までの手帖を編集したジャコメッティ晩年の創作現場を身近にうかがえる貴重な資料集。日々繰り返されるジャコメッティの感覚と思考の基本的な動きが濃密に…

矢内原伊作+宇佐見英治『対談 ジャコメッティについて』(用美社 1983)

日本で最初期にジャコメッティに注目し、それぞれ渡仏しジャコメッティ自身と深い交流を持ったふたりの文学者による対談。1980年に日本で開催された「ジャコメッティ版画展」の最終日におこなわれた公開対談をベースに、出版を念頭において改めておこな…

ジョルジョ・アガンベン『ニンファ その他のイメージ論』(編訳:高桑和巳 慶応義塾大学出版会 2015)

日本独自編集のアガンベンの芸術論集。絵画が中心で、映画と演劇とダンスが少々配合されている。全20篇。こういった著作では著者の論考そのものも楽しみであるのはもちろんだが、自分の知らない作家に出会えることの喜びもある。本書では日本ではあまりな…

ジャン・ジュネ『アルベルト・ジャコメッティのアトリエ』(現代企画室 鵜飼哲編訳 1999)

ジュネの芸術論6篇。レンブラント2篇、ジャコメッティ、綱渡り芸人でジュネの恋人だったアブダラへのメッセージ、犯罪少年たちへ向けたラジオ原稿、演劇論。貧しさと闇を抱えているがゆえに異彩を放ちつづける者たちへの讃歌。既成の枠組みを支える世俗的…

ウォルター・ペイター『ルネサンス』(1873, 1893)ほか 筑摩書房『ウォルター・ペイター全集1』(2002)

150年ほど前に刊行されたウォルター・ペイターの唯美主義の書『ルネサンス』は美術や文芸の世界にスキャンダルを巻き起こし、ペイターの学者としての道や文筆家としての活動に困難さをもたらすことになった著作であるとともに、世紀末芸術を加速させると…

アントワーヌ・テラス『ポール・デルヴォー 増補新版(シュルレアリスムと画家叢書3 骰子の7の目)』(原著 1972, 與謝野文子訳 河出書房新社 1974, 2006 )

ポール・デルヴォーの絵画世界は、それに触れた著述家にそれぞれの詩的世界を夢想させる自由を与えているようで、画集の解説文という位置づけにある文章であっても、作品の美術史上の位置づけや意味づけよりも、鑑賞者が受け止めるであろう印象のひとつのケ…

『グランド世界美術 13 デューラー/ファン・アイク/ボッシュ』(講談社 1976 編集解説:前川誠郎 特別寄稿:野間宏 図版解説:勝國興)41×31cm

書名に表記されている画家は3名だが、内容的にはより広範な対象を扱っている画集。構成としては「ファン・アイクからブリューゲルまでの15,16世紀の初期フランドル絵画」と「デューラーの時代―16世紀のドイツ絵画」という二部構成で、ヨーロッパ北部…

元木幸一『西洋絵画の巨匠 12 ファン・エイク』(小学館 2007)31×23cm

ファン・エイクがもたらした油彩技術の革新と新しい絵画モチーフに重点をおいて紹介解説するために、特定作品に比重を置き、全体図と部分図から詳しく説明を施しているのが特徴の画集。ファン・エイクの油彩画30点はほとんど取り上げられているが、そのな…

前川誠郎編著『ファン・エイク全作品』(中央公論社 1980)33×26cm

作品全44点、図版数全106点。内訳は ファン・エイク作が30点、図版数66. ロヒール・ファン・デルウェイデン作が6点、図版数17、 ロベルト・カンピン作が8点、図版数19、 ジャック・ダレー作画4点、図版数4ヤン・ファン・エイクを中心に初…

ステファノ・ズッフィ『ファン・エイク  アルノルフィーニ夫妻の肖像』(原著 2012, 千速敏男訳 西村書店 2015)

謎が謎のままで放置されるにもかかわらず、謎の味わいを最大限に引き出し、多くの資料を読み込んだ理性的なアプローチと惑溺ともいえる作品愛から様々な解釈の方向性を残しつつ、見るべき対象をしかと捉えて離さないステファノ・ズッフィの本文。見ていると…

監修:千足伸行『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』(小学館 2018)30×21cm

フェルメール全作品35点(存疑の「聖女プラクセデス」「フルートを持つ女」は含まない)。人気があるため多くの画集が刊行されているフェルメールであるが、原寸美術館はそのなかでも見る価値の大きな一冊に仕上がっている。 6つのテーマ別に集められた作…

ベルナール・ビュフェの画集三冊

静岡県長泉町にあるベルナール・ビュフェ美術館は表現主義の画家ビュフェの作品のみを収蔵・展示する美術館で、スルガ銀行創業家に生まれ第三代頭取を務めた1973年に岡野喜一郎によって創設された。 ビュフェの作品は第二次大戦を経験した作者の不安で荒…

著・監修:宮下規久朗『カラヴァッジョ原寸美術館 100% CARAVAGGIO!』(小学館 2021)30×21cm

「原寸美術館」シリーズの第7弾。カラヴァッジョの代表的作品30点を、原寸含むカラー図版とカラヴァッジョを専門とする美術史家宮下規久朗の解説で案内する。原寸や通常の画集よりも縮尺の比率が大きい図版で見ると、カラヴァッジョの油彩の技術の高さと…

宮下規久朗『カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会 2004)

『カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン』は美術史家宮下規久朗の主著で、第27回サントリー学芸賞(芸術・文学部門)と第10回地中海学会ヘレンド賞を受賞した会心の作であり出世作でもある。 宮下規久朗は、修士課程修了後、いったんは大学を出て、美術館で学芸…

ミア・チノッティ『カラヴァッジオ 生涯と全作品』(原著 1991, 森田義之訳 岩波書店 1993)34×28cm

カラヴァッジオ研究の権威ミア・チノッティの学術書『ミケランジェロ・メリージ,通称カラヴァッジオ:全作品』(1983)を一般向けに平易に書き直し再構成されたもの。年代順にカラヴァッジオの生涯と作品を追っていく堅実な作家論であり画集でもある。カラー…

『日本の名画2 高橋由一』(中央公論社 1976)34×26cm

日本最初の洋画家と言われる高橋由一画業をカラー図版48点と、絵画に強い比較文学者であり作家の芳賀徹のエッセイ「洋画道の志士――高橋由一の精神史」と、美術評論家青木茂による評伝・作品解説からたどる大型本の作品集。 残存作品が限られているというこ…

『日本の名画24 岡鹿之助』(中央公論社 1977)34×26cm

岡鹿之助の作品は、ある時いっぺんに粒子化して霧散してしまいそうな儚げな佇まいを持っている。 煙突から煙が出ていたり、花瓶に花が生けられていたり、道には轍や人が歩いた跡があったりして、日常的なところも描かれているのに、この人の作品からは、人の…

星野太『美学のプラクティス』(水声社 2021)

主著『崇高の修辞学』(月曜社 2017)から4年、2010年から2019年までのあいだに発表してきた単独の論文やエッセイを「崇高」「関係」「生命」という3つのテーマのもとに集めてリライト・再編集して出来上がった美学論集。芸術作品そのものを語るより…

『毛利武彦画集』(求龍堂 1991)

毛利武彦の名前を知ったのは、たしか有田忠郞の詩集のなかでのこと。本書の巻頭には詩人阿部弘一の詩が寄せられており、詩人との相性が良かったことがうかがわれる。 ちなみに阿部弘一はフランシス・ポンジュのや訳者で、有田忠郎はサン=ジョン・ペルスの訳…

ハンス・ベルメール(1902-1975)の作品集 三冊

頽廃美。20世紀の戦争への怒りを込めた攻撃的な作品群は多くのシュルレアリストたちに受け入れられ、日本では1965年以降の澁澤龍彦の紹介によって広く知られるところとなったハンス・ベルメールは、20世紀ドイツの人形作家かつ写真家であり、画家と…

ハンス・フィッシャー『メルヘンビルダー フィッシャーが描いたグリムの昔話』(佐々梨代子+野村泫訳 こぐま社 2013)

バウハウスで教鞭をとっていたパウル・クレーであるが、弟子を探そうとするとハンス・フィッシャーくらいしか出てこない。 画家というよりも絵本作家で、クレーの作品や教えからどのような影響があるのか、グリムの童話一作を一枚の絵の中に描く手法(一枚絵…

イアン・ターピン『エルンスト 新装版 <アート・ライブラリー>シリーズ』(原著 1993, 新関公子訳 西村書店 2012)A4変型判 297mm×232mm

カラー図版48点、モノクローム挿図33点。1作品ごとに解説を見開きで配してあるために、参照していると考えられる先行作品との関連や、採用されているエルンストが開発した多様な表現技法の数々についての焦点化が非常にわかりやすい。 河出書房新社刊行…

サラーヌ・アレクサンドリアン『マックス・エルンスト 増補新版(シュルレアリスムと画家叢書5 骰子の7の目)』(原著 1971, 大岡信訳 河出書房新社 1973, 2006 )

シリーズものにはかなり当たりはずれがあって、本シリーズ、河出書房新社の「骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書 全6巻」はかなりの当たり。画家の全画業をまんべんなくピックアップしながら、図版として選択されている作品は代表作と注目作両方に目…

小出由紀子編著『ヘンリー・ダーガー 非現実を生きる』(平凡社 コロナ・ブックス)

貧困と自閉的な精神的障害のなかで生前誰にも見せることなく孤独に創造の世界に過ごしたヘンリー・ダーガー。死後にダーガーの部屋に残されていた原稿と画集を大家であるネイサン・ラーナーが見つけ、芸術的価値を感じて長年保存、美術関係者や研究者への普…

マックス・エルンスト『慈善週間 または七大元素』(原著 1934, 巖谷國士訳 河出文庫 1997, 河出書房新社 1977)

『百頭女』『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』に次ぐコラージュ・ロマン三部作の最終巻。小説と銘打ちながら、章ごとの冒頭にエピグラフとして引かれる他者の文章以外には、エルンストがつけた章題のほかに文章が全くない徹底的で斬新な一冊。2…

パウル・クレー『教育スケッチブック 新装版バウハウス叢書2 』(原著 1925, 利光功訳 中央公論美術出版社 2019)

ヴァイマール・バウハウスでの1921-22年に行った形態論の授業のエッセンスを編集し刊行した実践的理論書。『造形思考』や『無限の造形』にくらべるとコンパクトで、メモ程度の文章に最低限のスケッチをつけポイントのみを浮かび上がらせた簡潔な手引書の印象…

パウル・クレー『無限の造形』(ユルグ・シュピラー編 原著 1970, 南原実訳 新潮社 1981 )

『造形思考』に並ぶパウル・クレーの理論的著作。バウハウスにおけるクレーの講義録やメモをまとめ、関連する作品の図版をあわせて著作化したもの。構成は『造形思考』よりも荒く、断片性が強いのだが、情報量も、創作や観賞に関する示唆も、本作のほうが多…

ダグラス・ホール『クレー 新装版 <アート・ライブラリー>シリーズ』(原著 1992, 前田富士男訳 西村書店 2012)A4変型判 297mm×232mm

カラー図版48点それぞれにダグラス・ホールの詩的かつ分析的で要を得た解説と、モノクロームの挿図32点、クレーの生涯を描きだしている巻頭エッセイからなる画集。 西村書店の<アート・ライブラリー>シリーズは、比較的多くの作品を高解像度で収録してい…

日本パウル・クレー協会編『クレー ART BOX ー線と色彩ー』(講談社 2006)

スイスの首都ベルンに2005年にオープンした「パウル・クレー・センター」の開館記念のコンパクトな画集。 版型はA24取で140×148mm。 収録作品は138点で、全部がカラー図版(デッサンはもともと白黒だがカラー写真による掲載)。 孫でパウル・クレー財団…