読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

良寛

秋月龍珉『禅門の異流 盤珪・正三・良寛・一休』(筑摩書房 1967, 筑摩叢書 1992) 抵抗者の真っ当かつ奇っ怪な姿

曹洞宗の黙照禅、臨済宗の看話禅、臨済系の寺から出た盤珪の不生禅、武士から曹洞宗の僧侶となった鈴木正三の二王禅、日本の禅の主だったところの流派の孤峰をたどることができる一冊。禅の「大死一番、絶後蘇生」の悟りとその後の生き様の四者四様を、多く…

谷川敏朗『校注 良寛全詩集』(春秋社 2005, 新装版 2014)

谷川敏朗の良寛校注三部作のうちではいちばんの力作。良寛自身も俳句や歌に比べれば、漢詩に傾けた時間やもろもろの思いはもっとも大きいのではないかと考えさせられる一冊。寺子屋や学塾に通った時代から、世俗的世渡りの要求に応えられずに出家したあとの…

谷川敏朗『校注 良寛全歌集』(春秋社 2003, 新装版 2014)

1350首もの歌を残した良寛には歌人という意識はなかったものと見える。漢詩においては禅僧の活動としての偈頌が含まれていたり、50歳を過ぎてから10年ごとに遺偈(禅僧としての最後の感懐)を残したりと、かなり形式的なものを踏まえて詩作していた…

谷川敏朗『校注 良寛全句集』(春秋社 2014)

良寛は曹洞宗の僧というよりもやはり歌人であり詩人としての存在が大きい。詩や歌の内容に仏の道が入ることが多くても僧としての偉大さよりも詩人としての輝きが先にきらめく。「法華讃」「法華転」という法華経讃歌の漢詩群はあっても、仏教の教えを説いた…

全国良寛会 監修 竹村牧男 著『良寛「法華讃」』(春秋社 2019)

良寛には法華経を称えた「法華讃」「法華転」と言われる漢詩作品集が四種あり、本書のもとになっているのは原詩102篇と著語(じゃくご)と言われる短い感想を述べたものと溢れる思いから書き添えられた和歌数篇からなる最大のもの。新潟市所蔵の良寛直筆…

入矢義高『良寛詩集』(現代語訳 禅の古典12 講談社 1982)

良寛自筆詩稿「草堂詩集」235首のうち重複を省いた184首と、岩波文庫版『良寛詩集』から47首を追加した全231首の漢詩に、読み下し文と現代語訳、訳注を施した充実の一冊。良寛も愛読した寒山詩についての仕事(岩波書店刊中國詩人選集5『寒山』 …

北川省一『良寛、法華経を説く』(恒文社 1985)

在野の良寛研究家北川省一の著作のうち良寛の法華経研究および法華経信仰を記した漢詩文『法華讃』『法華転』を読み説きながら良寛の法華観を考察した書物。大学に在籍する研究者とは異なり、資料の処理考察における厳密性に関する信頼度についての危うさ、…

松岡正剛『外は、良寛。』(芸術新聞社 1993, 講談社文芸文庫 2021 )芸術新聞社版についていた副題は「書くほどに淡雪の人 寸前の時、手前の書」

良寛の書を軸に語られた愛あふれる一冊。自身のサイト千夜千冊の第1000夜を『良寛全集』で締めくくっていたこともあり、どれほど力を込めた作品なのだろうかとすこし構えて読みはじめてみたところ、ベースが口述の語り下ろしということもあり、ですます調で…

上田三四二『この世 この生 ― 西行・良寛・明恵・道元』(新潮社 1984, 新潮文庫 1996)

世俗を離れて透体にいたるまで純化した人たちの思想と詩想を追う一冊。第36回の読売文学賞(評論・伝記部門)の受賞作であるが、いまは新刊書では手に入らない。 明恵は一個の透体である。彼はあたうかぎり肉体にとおい。もちろん、肉体なくして人間は存在…

相馬御風『大愚良寛』(1918, 考古堂 渡辺秀英校注 1974)良寛愛あふれる評伝

良寛のはじめての全集が出たのが1918年(大正7年)であるから、まだまとまった資料がない時期に、良寛の史跡を訪ね、ゆかりの地に伝わる逸話を地元の人々から直接聞き取り、良寛の遺墨に出会いながら、人々に愛された良寛の生涯をつづる。明治期から昭和期に…

唐木順三『良寛』(筑摩書房 1971, ちくま文庫 1985)天真爛漫と屈折の同居。漢詩の読み解きを中心に描かれる良寛像

良寛は道元にはじまる曹洞宗の禅僧で、師の十世大忍国仙和尚から印可を受けているので、悟りを開いていることになっているはずなのだが、実際のところ、放浪隠遁の日々を送っているその姿は、パトロンから見ても本人的にも失敗した僧と位置付けるのが正しい…

宮栄二『文人書譜6 良寛』(1979 淡交社)

良寛の遺墨八十一点を白黒写真の図版で紹介。解説付き。 良寛は本来、思想や文学を表現する実用の書を真に近代的芸術として展開させた稀有の人であった。良寛以前にあらわれた書の名手・名蹟は数多い。三筆・三蹟はじめ、中世の墨跡、寛永の三筆など、それぞ…

山崎昇『人と思想149 良寛』(1997 清水書院)

清水書院の「人と思想」シリーズで詩人が対象となる場合、伝記に実作品がふんだんに取り入れられて、優れたアンソロジーを読んだ気分にさせてくれる。本書の場合も漢詩、俳句、和歌の区別なく取り入れられていて、さらには書の図版も多く、良寛の全体像が見…

斎藤茂吉の良寛 『斎藤茂吉選集 第十五巻 歌論』

良寛についての歌論二篇を読んだ。 「良寛和歌集私鈔」(大正三年=1914)「良寛和尚の歌」(昭和二十一年=1946) 良寛の歌は総じて平坦単純であるから、左程にも思わない鑑賞者が多いと思ふが、その境地といひ調子といひ、なかなか手に行つたものである。俗…

足をのばす良寛

自制を少しゆるめるとき、足をのばして過ごす良寛が姿をあらわす。【歌】きさらぎの末つ方雪のふりければ 風まぜに 雪は降り來ぬ雪まぜに 風は吹き來ぬ埋み火に 足さしのべてつれ/\と 草のいほりにとぢこもり うち數ふればきさらぎも 夢の如くに盡きにけら…

東郷豊治編著『良寛詩集』創元社

東郷豊治編著 良寛詩集創元社1960※1957年の良寛全集版を修正 本文、読み下し文、訳の三部で構成。全詩を十章に分類して配列(ただし法華讃は取り上げられていないようである)。 現代語訳あり分類ありで、とても親しみやすい。 内容: 章 章題 作品番号 一 …

長田弘 『奇跡 ーミラクルー』

長田弘奇跡 ミラクル www.msz.co.jp2013 全詩集に入っていないかと思っていたら入っていた。記憶はあいまい。忘れるから何度でも読む。読んで、確認して、記憶をたどって過去にも出会う。そうして記憶を重ねていく。 今回のきっかけは、良寛。 今日は単著、…

水上勉 『良寛』

水上勉良寛1984 徳川の支配の仕組みに組み込まれた宗門を批判的に見る清らかさはあったが、僧としての資質には傷があったという視点から良寛が語られている。曹洞宗の僧良寛というよりも、家を捨て、宗門を捨て、文芸に生きようとした人間山本栄蔵の一生を、…

東郷豊治編著 良寛歌集

良寛歌集東郷豊治編著※『良寛歌集』編、創元社、1963 序より この歌集は、直接、真跡によることを第一とし、博捜して、なお遺墨をさがしえなかった詠歌には、孫引きした署名を掲げ、一首ごとに出拠を明記した。 ※長歌を含む 編者により84の項目に分類され…

『良寛道人遺稿』と『良寛詩集』 対応資料 (CSV形式)

良寛道人遺稿番号,良寛詩集頁,原文一行目1,295,開口謗法華2,296,如是両字高著眼3,296,白毫相光何所似4,297,文殊高々峰頂立5,297,度生已了未生前6,298,性相体力作因縁7,298,十方佛土在指注8,299,諸法本来寂滅相9,300,昔時三車名空有10,300,昔時三車名空伝11,3…

『良寛道人遺稿』と『良寛詩集』 対応資料 (表形式)

『良寛道人遺稿』と『良寛詩集』 対応資料 良寛道人遺稿 柳田聖山 訳 良寛道人遺稿|全集・その他|中央公論新社 読み下し文と訳で構成。原文はなし 訳注 良寛詩集大島花束・原田勘平 訳注 訳註 良寛詩集 - 岩波書店 原文と読み下しと訳注から構成。 現代語…

訳注 良寛詩集

良寛訳注 良寛詩集大島花束・原田勘平 訳注 www.iwanami.co.jp 大島花束編著の良寛全集(岩波書店)の漢詩全部(四百余)を収録。原文と読み下しと訳注から構成されている。 無一物の生涯とはいうが、信仰する法華経があって、詩書があって、自作の和歌は千…

良寛道人遺稿

良寛良寛道人遺稿柳田聖山 訳 良寛道人遺稿|全集・その他|中央公論新社 曹洞宗の禅僧、道元の系列、良寛の漢詩。読み下し文と訳で構成。原文はなし。柳田聖山の訳が読みやすく、解説も熱く、良寛初読に向いていると思う。 柳田聖山解説: 『毒語心教』にし…