西洋絵画
写真の発明と普及により絵画が外観の忠実な再現を期待されなくなり絵画独自の表現を追求していく時代に、それぞれ独自のリアリティーを追求し、表現への真摯さと相反することのないユーモアと残酷の感覚をともに持ち続けた三人の偉大な画家、ピカソ・ジャコ…
フランシス・ベイコンの代表作《磔刑》(1965年, ミュンヘン)から作家の全体像に迫る一冊。ひとつの作品に焦点を決めて作家の本質に迫っていく著作は刺激的で学習効率もよく、概説書や入門書の次に読むものとして貴重な位置を占めている。実際に接したとこ…
ジャコメッティのモデルをつとめ作家論を書いたことでも知られるイギリスの美術評論家・キュレーターであるデイヴィッド・シルヴェスターによるフランシス・ベイコンへの20年を超えるインタヴュー集成の書。訳者あとがきからも著者まえがきからも分かるこ…
ジャコメッティ存命中に発表されたすべての文章を収めた書物。 ジャコメッティ愛好家必読の書物ではあるが、芸術家本人が書いたテクストだからといって絵画や彫刻と同じレベルの表現とはとらえないほうが無難。あくまで芸術家本人が綴ったところの参考資料と…
聖書に題材をとったレンブラントの作品を見ていると、対象となっている聖書の記述を確認したくなる気持ちにさせられる場合が多くあるのではないだろうか? レンブラントの聖書の場面は、いわゆる聖画一般のイメージとは異なり、描かれている人物たちは貧しく…
レンブラントはその画業全般にわたって新約旧約の聖書のエピソードを取り上げて自身の作品をつくりあげてきた。ただ、その作品の構成は聖書の記述に厳密に従ったものではなく、レンブラントが聖書と聖書をもとにした先行作品に取材して、独自に形づくりあげ…
本書はデジタル技術によってリマスタリングされた、オランダレンブラント・リサーチ・プロジェクト(RRP)公認の高精細画像の作品約180点を収録した最新図録集。A4判変型で224ページ、本体定価2500円。かなりお買い得の作品集。収録図版はか…
ドビュッシー作曲でオペラ化もされたメーテルリンクの戯曲。水の精を思わせるメリザンドは何者かから逃げて森の中の泉の傍らで泣いているところを、狩りの途中で道に迷った寡の王族ゴローに出会い見初められ、結婚相手となり城に住まうようになるが、その城…
写真の登場によって絵画における写実再現の価値下落が起こったあとの時代において如何なる表現の途が残さているのかという探究が二十世紀以降の芸術界の動向を方向づけている。本書は近代以前の慣習にとらわれない最初期印象派の画家モネの視覚と写実とのあ…
フランシス・ベーコンのインタビュー集も著作として持つイギリスの美術評論家・キュレーターであるデイヴィッド・シルヴェスターのジャコメッティ考察の書。ジャコメッティのモデルをつとめたことのある人物のうちでは最も美術批評っぽいテクストで、作家が…
1956年から1961年にかけての五度にわたってジャコメッティのモデルをつとめた経験から生まれた哲学者矢内原伊作のテクストと日記およびメモにジャコメッティからの手紙を添えてジャコメッティ晩年の基本的資料集成を目指した一冊。完成させることを…
レンブラントの生涯と作品を追う本篇とレンブラントの実像にいくつかの角度から迫る資料篇の二段構成からなるコンパクトでありながら充実した導入書。本篇を執筆したのがフランスの作家、小説家、美術評論家であるパスカル・ボナフーで、レンブラントの起伏…
見開きページごとにトピックが変わっていて、簡潔かつ印象的にレンブラントの作品世界の様々な特徴に触れることができる、手軽で美麗な美術書。掲載されているカラー図版は他書に比べて明るく鮮明で、細部や暗部がより明瞭に識別することができる。自作と関…
記憶と今現在のあいだに生み出される新しいバランス。 古いものを知っていないことの危うさが読みすすめるごとに深く深く突き刺さってくる。西洋美術史の奥行きに驚かされる論考。 www.hanmoto.com 【目次】序 アビ・ヴァールブルクと『ムネモシュネ・アトラ…
創作において自分にも他人にも一貫してきわめて厳しい態度を取り、容易に褒めるようなことがなかったジャコメッティが、自作を撮影した写真に関してほぼ手放しで称賛の意をあらわし、ごく身近な関係者にも見ることを勧めた珍しい写真作品集。 生まれ故郷と作…
ジャコメッティ晩年の63歳、胃がん手術明けの年、1964年9月12日から10月1日までの18日間に、パリのアトリエにおいて美術評論家でエッセイストのアメリカ人ジェイムズ・ロードをモデルとして油彩作品を制作した際の記録。初日からモデルがパリ…
20世紀のフランスを代表する詩人のひとりイヴ・ボヌフォアの重厚なテクストとともにアルベルト・ジャコメッティの生涯と創作の軌跡をたどることができる充実した作品集。 本書は20年ほど前に池袋西武の三省堂美術洋書コーナーにて9000円くらいで購入…
矢内原伊作がジャコメッティに出会いはじめてモデルとなった1955年から最後にモデルをつとめた1961年までの手帖を編集したジャコメッティ晩年の創作現場を身近にうかがえる貴重な資料集。日々繰り返されるジャコメッティの感覚と思考の基本的な動きが濃密に…
日本で最初期にジャコメッティに注目し、それぞれ渡仏しジャコメッティ自身と深い交流を持ったふたりの文学者による対談。1980年に日本で開催された「ジャコメッティ版画展」の最終日におこなわれた公開対談をベースに、出版を念頭において改めておこな…
ポール・デルヴォーの絵画世界は、それに触れた著述家にそれぞれの詩的世界を夢想させる自由を与えているようで、画集の解説文という位置づけにある文章であっても、作品の美術史上の位置づけや意味づけよりも、鑑賞者が受け止めるであろう印象のひとつのケ…
書名に表記されている画家は3名だが、内容的にはより広範な対象を扱っている画集。構成としては「ファン・アイクからブリューゲルまでの15,16世紀の初期フランドル絵画」と「デューラーの時代―16世紀のドイツ絵画」という二部構成で、ヨーロッパ北部…
最初に哲学書房(1993)、のちに筑摩書房より文庫化(2009)された『<象徴形式>としての遠近法』を含むパノフスキーの代表的な美術論集。 ひとつの文章が長くて、内容自体も凝縮されたものであるために、じっくり根気よく付き合っていかないと読み通すのが難し…
ファン・エイクがもたらした油彩技術の革新と新しい絵画モチーフに重点をおいて紹介解説するために、特定作品に比重を置き、全体図と部分図から詳しく説明を施しているのが特徴の画集。ファン・エイクの油彩画30点はほとんど取り上げられているが、そのな…
作品全44点、図版数全106点。内訳は ファン・エイク作が30点、図版数66. ロヒール・ファン・デルウェイデン作が6点、図版数17、 ロベルト・カンピン作が8点、図版数19、 ジャック・ダレー作画4点、図版数4ヤン・ファン・エイクを中心に初…
謎が謎のままで放置されるにもかかわらず、謎の味わいを最大限に引き出し、多くの資料を読み込んだ理性的なアプローチと惑溺ともいえる作品愛から様々な解釈の方向性を残しつつ、見るべき対象をしかと捉えて離さないステファノ・ズッフィの本文。見ていると…
フェルメール全作品35点(存疑の「聖女プラクセデス」「フルートを持つ女」は含まない)。人気があるため多くの画集が刊行されているフェルメールであるが、原寸美術館はそのなかでも見る価値の大きな一冊に仕上がっている。 6つのテーマ別に集められた作…
静岡県長泉町にあるベルナール・ビュフェ美術館は表現主義の画家ビュフェの作品のみを収蔵・展示する美術館で、スルガ銀行創業家に生まれ第三代頭取を務めた1973年に岡野喜一郎によって創設された。 ビュフェの作品は第二次大戦を経験した作者の不安で荒…
「原寸美術館」シリーズの第7弾。カラヴァッジョの代表的作品30点を、原寸含むカラー図版とカラヴァッジョを専門とする美術史家宮下規久朗の解説で案内する。原寸や通常の画集よりも縮尺の比率が大きい図版で見ると、カラヴァッジョの油彩の技術の高さと…
『カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン』は美術史家宮下規久朗の主著で、第27回サントリー学芸賞(芸術・文学部門)と第10回地中海学会ヘレンド賞を受賞した会心の作であり出世作でもある。 宮下規久朗は、修士課程修了後、いったんは大学を出て、美術館で学芸…
カラヴァッジオ研究の権威ミア・チノッティの学術書『ミケランジェロ・メリージ,通称カラヴァッジオ:全作品』(1983)を一般向けに平易に書き直し再構成されたもの。年代順にカラヴァッジオの生涯と作品を追っていく堅実な作家論であり画集でもある。カラー…