読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

西洋絵画

『原色明治百年美術館』(朝日新聞社 1967)西洋絵画以外の伝統を持つ国の美術界の歴史 混ざると変わる

市場にはほとんど出回っていない書籍。興味があったら図書館で借りて観て、という一冊。 明治期の日本画と洋画の激動と受容を、傍観者的立場でも微かに通覧し、追体験することができる資料的価値の高い書籍。 日本画と洋画があることで生じた苦悩と豊饒。混…

高畑勲『一枚の絵から 海外編』(岩波書店 2009) 先行作品との出会いがつくり出すあらたな制作欲に出会う時間

日本編と同時発刊の海外編。一冊での刊行であれば編集も変わってきたであろうが、日本で500ページ超の書籍を刊行するのは相当難しいことなのだろう。収録エッセイはスタジオジブリの月刊誌『熱風』におけるおもに絵画作品に関する連載がベースになってお…

藤田治彦『もっと知りたい ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ』(東京美術 2009) ブルジョア出身で贅沢品作成に才能のある芸術家が取り組んだ社会主義への夢

ウィリアム・モリスは世界を美しくしようとした。美しさへの才能が開花したのは著述の世界と、刺繍や染色、カーペット、カーテン、壁紙、タペストリーなどのテキスタイル芸術。 目指すのは争いも苦痛も失敗も失望も挫折もない、人々の趣味道楽だけでうまく回…

マックス・エルンスト『百頭女』(原書 1929, 巖谷國士訳 1974, 河出文庫 1996)切り貼りから生まれる切断と融合、新世界創造の痛みを伴ったエネルギー

マックス・エルンストのコラージュ・ロマン第一弾『百頭女』。複数の重力場、複数の光源、複数のドレスコード、複数の遠近法、複数の世界が圧縮混在する147葉のコラージュ作品とシュルレアリスム的キャプションから成る出口なしの幻想譚。二作目の『カル…

宮下規久朗『モチーフで読む美術史2』(ちくま文庫 2015) 喪失者による虚飾のない仕事。人の心を動かす美術の力へのまなざし。

2013年の『モチーフで読む美術史』につづく文庫版オリジナル著作第二弾。あらたに50のモチーフから美術作品を読み解いていく、小さいながらも情報量の多い作品。 著者である宮下規久朗は、前作『モチーフで読む美術史』の校了日に一人娘を22歳の若さ…

ゲオルク・ジンメル『ジンメル・エッセイ集』 川村二郎編訳 (平凡社ライブラリー 1999)アドルノやベンヤミンに影響を与えたエッセイのスタイルと切れ味の良い文章

哲学者・社会学者としての論文や講義録にもジンメル節と言っていいようなことばの選択が匂い立つことはままあるのだが、一般読者層に向けて書かれたジンメルの哲学的エッセイは文化や芸術を鮮やかに扱っていて、より一層書き手の個性が際立って、文章自体が…

門屋秀一『美術で綴るキリスト教と仏教 有の西欧と無の日本』(晃洋書房 2016)キリスト教の宗教画と日本の禅画を比較しながら最終的には西田幾多郎の哲学の核心にせまろうとする著作

美術の棚にあったけれど、著者自身があとがきで書いているように宗教学の本。出版社のサイトにもジャンルは哲学・宗教学と書いてあったので、美術の歴史や技巧や洋の東西の美術的な差異などについての記述を期待していると裏切られる。宗教画や禅画の図版は…

宮下規久朗『モチーフで読む美術史』(ちくま文庫 2013) とりあわせにも著者の魂がこもる一冊。たとえば蝶はジェラール「クピドとプシュケ」応挙「百蝶図」コールテ「セイヨウカリンと蝶」

見開き2ページのコラムにカラー図版2ページの体裁で、66の絵画モチーフについて取り上げた美術書。1000円を切った価格で、ほぼすべての図版がカラーというのはとても贅沢。コラムには絵画モチーフについての基本的な情報と、モチーフにまつわる雑学…