西洋絵画
頽廃美。20世紀の戦争への怒りを込めた攻撃的な作品群は多くのシュルレアリストたちに受け入れられ、日本では1965年以降の澁澤龍彦の紹介によって広く知られるところとなったハンス・ベルメールは、20世紀ドイツの人形作家かつ写真家であり、画家と…
バウハウスで教鞭をとっていたパウル・クレーであるが、弟子を探そうとするとハンス・フィッシャーくらいしか出てこない。 画家というよりも絵本作家で、クレーの作品や教えからどのような影響があるのか、グリムの童話一作を一枚の絵の中に描く手法(一枚絵…
カラー図版48点、モノクローム挿図33点。1作品ごとに解説を見開きで配してあるために、参照していると考えられる先行作品との関連や、採用されているエルンストが開発した多様な表現技法の数々についての焦点化が非常にわかりやすい。 河出書房新社刊行…
シリーズものにはかなり当たりはずれがあって、本シリーズ、河出書房新社の「骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書 全6巻」はかなりの当たり。画家の全画業をまんべんなくピックアップしながら、図版として選択されている作品は代表作と注目作両方に目…
貧困と自閉的な精神的障害のなかで生前誰にも見せることなく孤独に創造の世界に過ごしたヘンリー・ダーガー。死後にダーガーの部屋に残されていた原稿と画集を大家であるネイサン・ラーナーが見つけ、芸術的価値を感じて長年保存、美術関係者や研究者への普…
『百頭女』『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』に次ぐコラージュ・ロマン三部作の最終巻。小説と銘打ちながら、章ごとの冒頭にエピグラフとして引かれる他者の文章以外には、エルンストがつけた章題のほかに文章が全くない徹底的で斬新な一冊。2…
ヴァイマール・バウハウスでの1921-22年に行った形態論の授業のエッセンスを編集し刊行した実践的理論書。『造形思考』や『無限の造形』にくらべるとコンパクトで、メモ程度の文章に最低限のスケッチをつけポイントのみを浮かび上がらせた簡潔な手引書の印象…
『造形思考』に並ぶパウル・クレーの理論的著作。バウハウスにおけるクレーの講義録やメモをまとめ、関連する作品の図版をあわせて著作化したもの。構成は『造形思考』よりも荒く、断片性が強いのだが、情報量も、創作や観賞に関する示唆も、本作のほうが多…
カラー図版48点それぞれにダグラス・ホールの詩的かつ分析的で要を得た解説と、モノクロームの挿図32点、クレーの生涯を描きだしている巻頭エッセイからなる画集。 西村書店の<アート・ライブラリー>シリーズは、比較的多くの作品を高解像度で収録してい…
スイスの首都ベルンに2005年にオープンした「パウル・クレー・センター」の開館記念のコンパクトな画集。 版型はA24取で140×148mm。 収録作品は138点で、全部がカラー図版(デッサンはもともと白黒だがカラー写真による掲載)。 孫でパウル・クレー財団…
A5判159ページにモローの代表的作品145点をオールカラーで収めた手軽だが充実した作品集。解説文は章ごとにわずかな分量を占めるに過ぎないが、要点を押さえてギュスターヴ・モローの人物像と作品傾向を伝えているために、ためになる。アカデミック…
マティスとルオーの出会いは早く1893年パリ国立美術学校のギュスターヴ・モローの教室でのことであった。出会った当初はあまり交流がなかったようだが、その後、サロン・ドートンヌでの守旧派に対しての共闘を経た後、マティスの息子のピエールが画商と…
1.ジョルジュ・ルオー版画展 ―暴かれた罪と苦悩― 1989年 町田市立国際版画美術館 高木幸枝+箕輪裕 184点※『ユビュおやじの再生』『ミセレーレ』『サーカス』『悪の華のために版刻された14図』『流れる星のサーカス』『受難』『回想録』『グロテ…
ジョルジュ・ルオーの全絵画の目録。掲載作品数全2568点。装飾美術学校に通っていた1885年の10代の素描から、1956年85歳での油彩作品までを、時代ごとテーマごとに分けて網羅した大型本。全二冊、総ページ数670ページ。売価88000円…
出会いというものは運命だから、後々の自分への影響を考えて自由に選択できるものとは考えていないほうがいいが、仮に画家ジョルジュ・ルオーの作品を意識的に系統的に見てみようとするならば、かなり期待を裏切られずに鑑賞できる優秀な作品集。 日本独自の…
フランスの近代芸術史家による本格的なジョルジュ・ブラック論。日本語版ではページの上部四分の一が図版掲載スペースになっていて、論じている対象や該当の時代を象徴する作品をたくさん取り上げている。図版数全227点。モノクロームでしかも限られたス…
小海永二と同じくアンリ・ミショーの特異な隠者性に魅かれて詩と絵画の世界を探求した詩人鶴岡善久によるアンリ・ミショー論。多くの詩が引かれ、そこにあらわれたイメージについて語られることが多いので、詩と絵画双方を論じていながら、ミショーの絵画の…
1.美術出版社 世界の巨匠シリーズ『ブラック』 レイモン・コニャ解説 山梨俊夫訳 1980 33×26cm 原色図版48葉、モノクローム図版72点。日本で出ている画集のなかでは、もっとも数多くのブラックの作品に触れられる一冊。原色図版の作品ごとに付けられた…
東京国立近代美術館で開かれた回顧展にあわせて出版されたアンリ・ミショーの日本独自の詩画集。画業の全期間をカバーした全59点の絵画・デッサンと、その絵が生まれた情況に寄り添うような詩人自身の言葉からなる一冊は、アンリ・ミショーの詩人と画家の…
ブラックの『昼と夜』は、1917年から1952年まで、画家35歳から70歳まで折に触れて手帳に書かれたアフォリズム176篇を集めて書籍としてまとめられたもの。 ブラックは祖父の代からの建築塗装業を営む家系に生まれ、15歳で日中学校に通う傍ら…
1842年、雇われ画家として中東を旅行していた25歳のリチャード・ダットは、猛暑の中で仕事をし過ぎて日射病となるとともに、その後殺人をおこすまでになる精神病に囚われはじめた。自分はエジプトの神、オシリスの使者であり、悪魔に常に付け狙われて…
エンドレス・リピートできるヤバいミュージックビデオ。 再生一回2分47秒(167秒)に込められたヨーロッパ文化の精髄。 フレディ・マーキュリーの天才が発掘し変奏させたイギリスの文化の奥深さに圧倒される。 www.youtube.com 受容の衝撃の度合いから…
金沢21世紀美術館、2022年10月1日~23年3月5日開催の企画展「時を超えるイヴ・クラインの想像力―不確かさと非物質的なるもの」の公式図録。 第二次世界大戦後、核による全世界の滅亡を織り込んだ空虚な時空間に投入された、シンプルだがとても過激なイヴ・…
ビュトールの『ポール・デルヴォーの絵の中の物語』は,『夢の物質』の第二巻『地下二階』に収められた「ヴィーナスの夢」の章を抽出して訳出されたもの。全5巻の長大な作品の中でデルヴォーの絵に触発されて綴られた作品の一部が全体のなかでどのような位…
ミシェル・テヴォーはジャン・デュビュッフェが1976年にローザンヌに設立したアール・ブリュット・コレクションの初代館長を26年間にわたって務めた人物。ローザンヌ大学を卒業後、フランス社会科学高等学院に学んだ秀才で、本論考にも見られる視野の…
芸術の使命は創造的壊乱と個性の本来的な独走表現にあるといった信念のもとに生き活動したジャン・デュビュッフェの肖像を活写した日本オリジナルの評伝。シュルレアリスムの帝王アンドレ・ブルトンとも正面切って論争し、自分の主張や感情を曲げず傍若無人…
戦後の20世紀を代表するに足るフランスの異端的芸術家による芸術論であり闘争的宣言書。権威筋による既成の価値観に従順な表現は、有用性を付与されるかわりに、特権的ではあるが支配体制に絡め取られ飼い慣らされてしまっている規格化され抑圧的にはたら…
既成の価値観と消費形態に囚われない純粋な表現活動としてのアール・ブリュット(生の芸術)を提唱したデュビュッフェであるが、本人の創作活動はアール・ブリュット系の作品に似ているところはあるものの、スタイルの創造に意識的な職業的芸術家のものであ…
日本でカルパッチョの作品をまとめてみることのできる貴重な作品集。図版数は76。 個別の代表作を偏りなく冷静に取り上げて紹介しているのがいちばんの妙味。 初期作品から晩年にいたるまで、大きな画面の隅々にまで神経のいきわたった揺るぎない緊張感が…
ドレの挿画178点とともに読む『ドン・キホーテ 正編』の縮約翻訳本。岩波文庫版だと正編=前篇部分が三冊で1200ページ、本作はドレの挿画を含めて446ページなので約3分の1の分量。原作を読むのに躊躇している人にとっても52の話が欠けることなく…