読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

講演

アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド「象徴作用」(1927)その2

象徴作用(Symbolism)すなわち記号による体系化作用という視点から語られる組織論。 社会的象徴作用は、二重の意味をもっている。プラグマティックな面からいえば、それは諸個人を特定の行動へ向かわせる方向づけを意味し、また理論的な面からいえば、それ…

アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド「象徴作用」(1927)その1

探求者たちの知的な言葉は通念に対する冷却剤として機能することがままある。普段使いされない言葉をもって通常意識されることのない思考の枠組みにゆさぶりをかける。哲学的な思考実験といわれるものの価値は、その異物性によるところが大きい。 岩石とは、…

アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド「斉一性と偶然性」(1923)

イギリス経験論、ヒュームの系譜。習慣によって組み上げられ形作られる人間の様態について。 ヒュームは、ふつうはこうであるということに言及され、通常性(normality)の基準を提供したのであり、だから彼によれば、われわれの心に普通のことがくり返し与…

アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド「過去の研究」(1933)

労働力商品を売る生活のなかでの自由について。 大都市ならいづこにおいても、ほとんどすべてのひとが被雇用者であり、他人によって厳密に定められた通りのやり方で、その就業時間に従っている。また、それらのひとびとの態度物腰でさえ、一定の型にはめられ…

アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド「予見について」(1931)

文明論的な内容の90年前のハーバード大学での講演。凝集力が高く、即効性も持続性も兼ね備えている知的世界の巨人の言葉。ベンヤミンが好きだったパウル・クレーの未来に向かって後ろ向きに吹き飛ばされる天使の絵を思い出しながら、写経するように引用メモ。…

ピエール・ルジャンドル『同一性の謎 知ることと主体の闇』(原書2007、訳書2012)

佐々木中推薦のピエール・ルジャンドルの高校生向けの講演録。日本語と円を使って生をおくっている日本人は、日本語と円の信用体系の中で生きつつ維持しているというようなことを意識化してくれる。 私たちは、世界の物質性と言語との関係が、イメージへの信…

井筒俊彦『イスラーム文化 その根底にあるもの』(1981, 1991)

1981年春、国際文化教育交流財団主催の「石坂記念講演シリーズ」の三つの講演をあつめたもの。イスラームを理解しようとするならば、まず人権に対する神権という視点が必要になってくる。神が主人である世界。 講演1 イスラームという宗教は決して新しい宗…

オイゲン・ヘリゲル『日本の弓術』(1936)

ドイツ神秘主義のマイスター・エックハルトが説いた「離繋」(りけ Abgeschiedenheit)の探求のため仏教にも関心の領域を広げていたヘリゲルが、日本の大学に招かれ来日した際に仏教精神を分かち持つ弓道を習い、求道の果てに武士道の精神に到達したということ…

R.P.ファインマン『科学は不確かだ!』

ノーベル賞受賞の二年前の一九六三年に、四四歳のファインマンがシアトル市のワシントン州立大学で、三夜連続で行った一般向け講演を収録したもの(米沢登美子「解説」p187) Ⅰ 科学の不確かさ 研究は応用のためにやるものではありません。ついに真実を突き…