読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

加藤周一の菅原道真

『日本文学史序説 (上)』(ちくま学芸文庫
1975

筑摩書房 日本文学史序説 (上) / 加藤 周一 著

 

読書メモ:
p135

貫之・道真に代表される九世紀末の知識人文学の成立は、その後の日本文学史を視野に入れるとき、まさに画期的であったといわなければならない。紀貫之太宰府配流以後の道真の文学的業績ほどあざやかに、政治・経済的支配層と、文化創造者としての知識人層との分離を示すものはないからである。ここではじまった分離は、以後多少の曲折を経ながらも、次第に徹底して今日に到るのである。



道真以降、つまり『古今集』以降は貫之的貴族文化創造者型知識人が支配的になっていくながれではありますが、そのながれのなかで政治・経済的な俗なるものの表現は、日記文学やものがたり、随筆文学のなかに含まれていくようになったようです。たとえば貫之の『土佐日記』の舟乗りに関する記載などに当時の風俗を多少感じることができますが、情報伝達の質と量とその凝縮度では『菅家文草』『菅家後集』のほうに軍配が上がりそうな気がします。
「『菅家文草』と『菅家後集』は、抒情詩の世界を画期的に拡大した」と加藤周一からはほぼ絶賛というほどの評価を受けていますが、令和が始まった2019年現在、道真の作品は主要出版社の文庫本では読むことはできません。接する機会も、紹介される機会もあまりなく、残念なことです。

 

こちらは未読:菅原道真 (コレクション日本歌人選)

http://kasamashoin.jp/2012/10/post_2422.html

 

ネット上には熱心な紹介者がいらっしゃるので、そちらから作品に触れてみるのが良策です。

山陰亭 ◆漢詩和歌快説講座・目次◆


加藤周一
1919 - 2008

菅原道真
845 - 903