宮坂宥勝+梅原猛
生命の海 「空海」 仏教の思想〈9〉
1968, 1996
隠れた真相があるというのが、やはり秘密じゃないかと思うのです。近代的な意味の神秘主義ではないんですけれども、そこに、何かとらえられないような見えない真実在がある。それはわれわれの悟性をある意味では越えている。ですから、そういうものをとらえようとするばあいには、どうしてもなにか象徴というか、シンボルを使わなければいけないという、シンボル的な表現が必要になってくるでしょう。(p218)
私はこのような肯定の側面を濃くしたのは、密教の中にある発出論ではないかと思う。すべてのもの、人間も、物も、すべての存在するものは、このような大いなる空の境位にすむ仏、大日如来が生み出したものである。(p300)
日本的な空海の汎神論。外部なしで全世界を相手にして、さらに肯定的に世界を読み取っているところがとても魅力的に思える。さすがに二十一世紀の現在において加持祈祷まで全面的に肯定することはできないが、呪術的な側面は時代的な制約もあったと考えられるので、現在の視点で加持側に重心をおきつつアップデートしていけばいいのではないだろうか。