肯定する空海の強調。100ページで一挙に核心に連れて行ってくれます。
『生命の海 「空海」 仏教の思想〈9〉』所収の「死の哲学から生の哲学へ」よりも、空海の個別の著作によりそいながら彼の思想を鮮やかに描き出しています。
※『即身成仏義』『声字実相義』『吽字義』の三著が中心。
引用メモ:
私はこの身体性の肯定、物質の重視、コスモロギーの存在を、密教の思想的特徴と考える。(p71)
空海は密教の思想的特徴を、法身説法と果境可説の二つにおいている。(p51)
[法信説法]
法身説法というのは、先に述べたように、法身としての毘盧遮那は説法しないというのが顕教の説であるが、この毘盧遮那仏も説法すると説くのが密教である。(p51)
[果境可説]
顕教において説きえざる果分(悟りの世界)を肯定的、積極的に説くのが密教である(p53)
物質重視、現存在重視の肯定世界。