読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

萩谷朴 「貫之の勇み足」

萩谷朴
紫式部の蛇足 貫之の勇み足
2000

土佐日記の勇み足」による土佐日記成立の背景:

歌壇第一人者としての名声と献歌を通じての辱知の関係とに一縷の望みをかけて、求職の申請書即ち「申文」として執筆し、忠平一家に献呈したのが土佐日記であったと私は確信している。当時の摂関家には、忠平の孫として、実頼の男、敦敏十四歳・頼忠十二歳があり、師輔の男伊尹十二歳等があった。(p51)

 

大伴茫人『姫様と紀貫之のおしゃべりしながら土佐日記』では、和歌入門書の提供対象として若年女子が仮構されていたが、老人紀貫之が年若い姫に歌を教えるということは冷静に考えればほぼありえない。高貴な家の若年男子向けの教養書として書かれた可能性のほうが格段に高いと気づかされた。
※大伴茫人『姫様と紀貫之のおしゃべりしながら土佐日記』自体は読み物として面白いので、こちらもお勧め。
※「紫式部の蛇足」部分は未読

 

萩谷朴
1917 - 2009