読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

NHK取材班 「『空海の風景』を旅する」

NHK取材班
空海の風景』を旅する
2002, 2005

『空海の風景』を旅する|文庫|中央公論新社

留学資金を自費で賄った空海、山の民に通じた空海という二つの視点が印象的。
また、各所にちりばめられた空海にまつわる写真が新鮮。空海密教のパワーを映像で伝えている。

※本書は司馬遼太郎空海の風景』ありきの構成なので、司馬遼太郎空海の風景』を読んでからかかわったほうがいいと思う。

 

異界としての山:

山々はかれら多くの私度僧をはじめ、農業をその支配原理とする律令国家にはまつろわぬ者どもの生きる世界であり、若き日の空海が身を投じていた世界であった。(p325)

 

農民とは異なり鉱物などの希少な交易物にも関わり深い山の民とのつながり:

山岳修行者空海という側面から、もうひとつの資金提供者がいた可能性も指摘しておきたい。それは、空海が修行中、深くかかわったと思われる山の民たちだ。(中略)山の仲間といっていい空海に資金提供を申し出たとしても驚きではないし、空海に唐から最先端の精錬術や地質学を持ち帰ってほしいと期待するところもあったのではないだろうか。(p151)

僧というかたちだけには収まらない空海の人物の大きさと異質さが感じとれる一冊。

 

目次:
空海の風景』への旅はこうして始まった
なぜ、今、空海なのか
讃岐
奈良
室戸岬
渡海
長安
博多
空海最澄
東寺
高野山
空海」現在の風景

空海
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