大島花束編著の良寛全集(岩波書店)の漢詩全部(四百余)を収録。
原文と読み下しと訳注から構成されている。
無一物の生涯とはいうが、信仰する法華経があって、詩書があって、自作の和歌は千首を優に超え、漢詩は四百を超える。書の腕も立つ。死の時にあっても想い人もいた。無いものは意識的に自分で捨ててきたもので、体は弱かったようだが、それ以外は有り余るほど恵まれているように思えるのは単なる嫉妬か。
襤褸又襤褸
襤褸是れ生涯。
食は裁に路邊に取り
家は實に蒿莢に委す。
月を看て終夜嘯き
花に迷うて言に歸らず。
一たび保社を出でしより
錯つて箇の駑駘と為る。
訳注に保社は「互いに保護する組合」とあった。
思うがままに生きようとしていた彼にそれがあったことはうらやましいとともになぜか誇らしい。
良寛
1758 - 1831
大島花束
1883 - 1963
原田勘平
1887 - 1974