序より
この歌集は、直接、真跡によることを第一とし、博捜して、なお遺墨をさがしえなかった詠歌には、孫引きした署名を掲げ、一首ごとに出拠を明記した。
※長歌を含む
編者により84の項目に分類されており、通常なされる季節分けなどの分類より、歌に興味がもたれるように工夫がされている。
私はどちらかというと長歌に関心が行った。
977(夢の世):
夢の世にまた夢むすひ草枕ねざめさびしく物思ふかな
114(庵の起居):
国上の 山の麓の 乙宮の 森の木下に
庵して 朝な夕なに 岩が根の 嶮しき道に
つま木こり 谷に下りて 水を汲み ひと日ひと日に
日を送り 送り送れば いたつきは 身につもれども
うつせみの 人し知らねば はてはては 朽ちやしなまし
岩木のもとに
万葉集を愛した人であるとともに、やはり仏門の人である良寛の姿が浮かんでくる歌だ。
良寛
1758 - 1831
東郷豊治
1905 - 1969