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全詩集に入っていないかと思っていたら入っていた。
記憶はあいまい。忘れるから何度でも読む。読んで、確認して、記憶をたどって過去にも出会う。そうして記憶を重ねていく。
今回のきっかけは、良寛。
今日は単著、単行本で読む。
良寛さんは言わなかったか?
米と薪と詩があれば人生は足りると。
夜は、玉ねぎの粥をつくる。
みじん切りにした玉ねぎを土鍋に入れて
煮干しからとった出し汁を注ぐ。
強火で煮立てて、煮詰めて、
ごはんをくわえ、蓋をして、
弱火でじわじわと煮込む。
シンプリファイ!
おかずはただ一品、桃の花の匂いだ。
(「良寛さんと桃の花と夜の粥」p83)
「シンプリファイ!」。初読の鮮烈さがかすかによみがえる。
ステキだ。うらやましい時間の過ごし方だと思いつつ、いろいろな味を欲している自分がいるので、玉ねぎのお粥は、まだ作ったことはない。玉ねぎたっぷりの汁物に主菜とゴハンの三皿くらい、労力と味覚を分散して作らないと結局はいろいろ満足できないで混乱してしまうため、すこしバタついて多めに食事の素材を用意しては作る。「シンプリファイ!」にはほど遠いが、そこが生粋の詩人との差異とあきらめて、良寛やある日の長田弘の食事とは違った食事の時間を過ごす。
今日は「山椒の代わりに胡椒をきつめに振ったパプリカ入りの麻婆豆腐」と「大根と油揚げの味噌汁」と「ゴハン」に「茹で野菜(ニンジン&ブロッコリー)」にノンアルコールビール1缶と焼酎のルイボスティー割りコップ3杯。減量中ではあるが、たらふく飲み食いした。
おかずはほかに、後進の進路相談。
やっかい、やっかい。
こちらは良寛さんの詩
生涯懶立身 生涯身を立つるに懶く
騰々任天真 騰々天真に任す。
嚢中三升米 嚢中三升の米
爐邊一束薪 爐邊一束の薪。
誰問迷悟跡 誰か問はん迷悟の跡
何知名利塵 何ぞ知らん名利の塵。
夜雨草庵裡 夜雨草庵の裡
雙脚等閒伸 雙脚閒に伸ばす。
(『訳注 良寛詩集』岩波文庫 p119 訳注:大島花束・原田勘平)
現実的には世間体を保つのにあくせくしていて、「騰々天真に任す」とはほぼ真逆の生活をおくっているのではあるが、「夜雨草庵の裡、雙脚閒に伸ばす」というところだけはは、良寛さんを知らず知らず反復している。
長田弘
1939 - 2015
良寛
1758 - 1831