読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

マルグリット・デュラス 『これで、おしまい』

マルグリット・デュラス
これで、おしまい
訳:田中倫郎
1995

マルグリット・デュラス、80歳、最後の書物。
切れがあり、芯のある、乾いたコトバが、刻まれている。
最後がこれかと思うと、こころが震える。


空の空なるかな。
万事空にして、風を追うが如し
旧約聖書「伝道の書」第一章)

 

私にわかっていること、それはもう自分にはなにもないということだ。
それがおそろしい。あるのはただ空虚さだけだ。どこを見ても空隙だけ。最後の土地のこの空虚さ。p91

 

からっぽであるということは、つまり自由だということだ。p81


飲みこめない空虚。埋められない空隙。手にあまる自由。
なすべきことは、コトバの配置に最後まで気をくばること。

萎えず、求め、抱きしめ、離れる、マルグリット・デュラス

 

マルグリット・デュラス
1914 - 1996
田中倫郎
1930 -