読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

アンリ・ミショー詩集

アンリ・ミショー詩集
訳:小海永二
(小沢書店版+土曜美術社版)

※上記2冊で選択に迷ったら土曜出版社版が質・量ともにお勧め。

 

【小沢書店版】
怠惰には、傲慢にはないいくつかの根拠がある。
けれども、人々は怠け者を執拗に攻撃する。
彼等が寝ているあいだに、人々は彼らを襲い、頭から冷水をぶっかける。
「怠惰」p21

 

【土曜美術社版】
けれども、人間たちは働いていた、まだ一度も働いたことがなかったかのように、太陽も見ずに、冷酷に過ぎてゆく自分の時間をも見ずに、働いていた。そして、働けば働くほど、もっとよく働くようにと駆り立てられた、巨大な出血の下で、かき混ぜながら、絶え間なくかきまぜながら。
「トンネルの中の歩み」p79

 

よく幻視者というふうにいわれているようだが、危うさの一歩手前で踏みとどまっている一人の人間という印象のほうが強い。


アンリ・ミショー
1899 - 1984
小海永二
1931 - 2015