九位
〔 上三花 〕 | ||
妙花風 みょうかふう |
言語や意識を超越した境位 | 無心の感、無位の位風の離見こそ、妙花にや有べき |
寵深花風 こうしんかふう |
極めて奥深い境位 | 高さは限りあり、深さは測るべからず |
閑花風 かんかふう |
柔和な境位 | 白光清浄なる現色、誠に柔和なる見姿 |
〔 中三位 〕 | ||
正花風 しょうかふう |
鮮明に見渡しのきく境位 | 青天白日の一点、万山早白遠見 |
広精風 こうしょうふう |
広く見渡せる境位 | 語り尽す、山雲海月の心 |
浅文風 せんもんふう |
幽玄の基礎 | 常の道を踏で、道の道たるを知るべし |
〔 下三位 〕 | ||
強細風 ごうさいふう |
強くはたらく風体 | 宝剣光寒(すさまじ)きは、冷へたる曲風なり |
強鹿風 ごうそふう |
荒々しい風体 | 虎生まれて三日、牛を食らう気あり |
鹿鉛風 そえんふう |
粗雑な風体 | 木鼠(もくそ)は五の能あり。(中略)いずれも其分際に過ぎず |
九位習道の次第
中初より入門して、上中・下後と習道したる、堪能の達風にては、下三位にても、上類の見風をなすべし。中位広精風より出でて下三位に入たるは、強細・強鹿の分力なるべし。其外、徒に下三位より入門したる為手は、無道・無明の芸体として、九位のうちとも云難かるべし。
※日本古典文学大系 『歌論集 能楽論集』西尾實校注から情報を抽出
解:
その道の正道をまずは辿るべし。いたずらに新奇を求むることなかれ。
世阿弥
1363 - 1443