読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

谷川俊太郎 『バウムクーヘン』

谷川俊太郎
バウムクーヘン

『バウムクーヘン』 | ナナロク社

2018

むかしのまじょはもうみんなあのよです
でもものがたりはいきのこる
あたしたちをこわがらせるために
「むかしのしょうじょ」p19

 

がっこうはもうきまっていることをおしえる
わたしはまだきまっていないことがすき
まだなまえのないものがすき
どきどきしたいから
「どうでもいいもの」p43

 

境目のゆらぎをくみとり言葉にする技術。何でも詩にできてしまうようで呆然とする。かなだけで書かれた詩が46篇。
読み通すことは少しも難しくはないが、詩にされた少し気になること、疑問に思うこと、引っかかっていることの捕獲の仕方、処理の仕方が名人芸のようで、その淡い味わいに一種の超越者の表現なのかもしれないという印象が残る。

 

谷川俊太郎
1931 -