世阿弥
花鏡(かきょう)
1424
日本の芸術論の一頂点を概観する。
段落詞書 | よみ | 主要部分抜き書き |
一調二機三聲 | いっちょうにきさんせい | 調子をば機にこめて、聲を出す |
動十分心 動七分心 |
どうじゅうぶんしんどうしちぶしん | 心を十分に動かして身を七分に動かせ |
強身動宥足踏 強足踏宥身動 |
ごうしんどうゆうそくとう ごうそくとうゆうしんどう |
余の、はたらき・物まねにて踏みならふべし |
先聞〔後見〕 | せんもん〔ごけん〕 | 先づ聞かせて後に見せよ |
先能其物成 去能其態似 |
まずよくそのものになり さてよくそのわざをにせよ |
その形の内よりすべし |
舞聲為根 | まいはこえをねとなす | 舞は、音聲より出でずは、感あるべからず |
時節當感字事 | じせつかんにあたること | 諸人一同に待ち受くるすなはちに、聲を出すべし |
序破急之事 | じょはきゅうのこと | 貴人の御意によりて仕る能は、次第不動なれば、かねてのあてがひ変るなり |
知習道事 | しゅどうをしること | めづらしきばかりをすれば、又めづからしからず |
上手之知感事 | じょうずのかんをしること | 無心の感を持つ事、天下の名望を得る位なり |
浅深之事 | せんじんのこと | 大の中には小あり。小の中には大なし。 |
幽玄之入堺事 | ゆううげんのさかいにいること | 諸道・諸事に於いて、幽玄なるを以て上果とせり |
〔劫之入〕 用心之事 |
〔ごうのいる〕 ようじんのこと |
少々と悪しき事の去るを、よき劫とす |
萬能綰一心事 | ばんのういっしんにつなぐこと | 無心の位にて、我心をわれにも隠す安心にて、せぬひまの前後をつなぐべし |
妙所之事 | みょうしょのこと | 「たへなる」と云ぱ、かたちなき姿也。かたちなき所、妙体也。 |
比判之事 | ひはんのこと | 目・智相応せば、よき見手なるべし |
音習道之事 | おんしゅうどうのこと | 真名の文字の内を拾いて、てにはの字にて詰め開きて謡うべし |
奥段 | おくのだん | 能を知らんと思はば、先、諸道諸事をうちおきて、当芸ばかりに入ふして、連続に習ひ極めて、劫を積む所にて、おのずから心に浮かぶ時、是を知るべし |
※日本古典文学大系 『歌論集 能楽論集』西尾實校注から情報を抽出
世阿弥
1363 - 1443