読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

佐藤優+竹内久美子『佐藤優さん、神は本当に存在するのですか? -宗教と科学のガチンコ対談』

タイトルからわかるように佐藤優に依存した対談。対談の相手は動物行動学研究家を名乗るエッセイストの竹内久美子で、彼女に科学の側の立場を代表させるのはかなり無理がある。リチャード・ドーキンスの発想(利己的遺伝子、ミーム)を自己展開するでもなく、単に波長が合うからといって依拠しているに過ぎない竹内の発言および質問に、プロテスタントの組織神学の立場に立つ佐藤優が、自身への批判的視点を開示しつつ、神学・哲学・科学哲学・社会学・数学などの学問的な立場からジャーナリスティックな一発信者に向けて一貫してレクチャーしている姿を確認するための書物となっている。竹内久美子佐藤優に対して批判(趣味批判)してきたのに対して、佐藤優竹内久美子に批判(趣味批判)のあり方とその限界を教えているという構図である。視野の広さが圧倒的に違っているのでシリアスな対談、シリアスな書物にはなっていない。タイトルにはガチンコとあるが、実際はかなりのハンディキャップマッチだ。佐藤優はあえてそういうことをやって、自身のフィールド(「この世界」)における活動を拡げ、想いを拡散させていく人物なのだと思う。

 

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佐藤優
1960 -
竹内久美子
1956 -