読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

バーバラ・ストック『ゴッホ 最後の3年』

ゴッホの最期の3年をマンガにした作品。オールカラー。

 マンガを読むと、切った耳が左側であること(自画像は鏡を見て描いているので右側に見える)や、エキセントリックなゴッホの言動がはっきりと印象にのこる。黄色い家での「画家の協同組合」の理想実現の絶望的なまでの難しさもひしひしと伝わってくる。近代的な個人の夢と共同体運営の相性の悪いことといったらほかにそうはないだろう。

理想と現実とでは、現実のほうがいつもすこしだけ正しい。正しいものは改めて現実に選ばれて、その場でほとんど消費され尽くす。消費されない個々の理想は、澱となって動きづらさの表現となり、後の世界に引き継がれる。この作品では、主人公ゴッホの自己制御が効かなくなった時の渦巻く空気、ドットや水玉で泡立つ空気の表現があとをひく。消費され尽くしてはいないある一人の想い。

ゴッホ──最後の3年|バーバラ・ストック作・川野夏実訳 ー 花伝社 書籍案内

こちらには作者の写真も。

www.aoyamabc.jp

フィンセント・ファン・ゴッホ
1853 - 1890
バーバラ・ストック
1970 -