今回は三日で三回ぐらい読んだ。だんだん詩の言葉が沁みこんでくる。
いつのときもあなたを苦しめていたのは、
何かが欠けているという意識だった。
わたしたちが社会とよんでいるものが、
もし、価値の存在しない深淵にすぎないなら、
みずから慎むくらいしか、わたしたちはできない。
(「こんな静かな夜」p11)
静かな諦念、静かな肯定のコトバを浮上させて、傷まないように留めておく。
貝殻をひろうように、身をかがめて言葉をひろえ。
人のいちばん大事なものは正しさではない。
(「渚を遠ざかってゆく人」p8)
60代に入ったときの詩人のコトバ。
長田弘
1939 - 2015