ノーベル賞受賞の二年前の一九六三年に、四四歳のファインマンがシアトル市のワシントン州立大学で、三夜連続で行った一般向け講演を収録したもの(米沢登美子「解説」p187)
Ⅰ 科学の不確かさ
研究は応用のためにやるものではありません。ついに真実を突きとめたときの興奮を味わうことこそがその目的なのです。(p11)
Ⅱ 価値の不確かさ
不確かだということは、いつかはもっと別のやり方が見つかるかもしれない可能性に他なりません。可能性の道が開いているということは、すなわち機会があることです。(p68)
Ⅲ この非科学的時代
理性のある人が自ら決断をくだすために必要な情報を、すべて明らかに示すことこそ、真の正直といえましょう。(p146)
明晰かつユーモラス。そしてポジティブマインド。薬になる程度の毒を巧みに配合しつつ、成功した研究者の話は軽やかにすすむ。