良寛についての歌論二篇を読んだ。
「良寛和歌集私鈔」(大正三年=1914)
「良寛和尚の歌」(昭和二十一年=1946)
良寛の歌は総じて平坦単純であるから、左程にも思わない鑑賞者が多いと思ふが、その境地といひ調子といひ、なかなか手に行つたものである。俗流の歌の気取とはしやぎの域を脱して渋味と底光りと落著(おちつき)がある。(「良寛和歌集私鈔」p185)
私はまさに「左程にも思わない鑑賞者」のひとりであったが、茂吉の注釈ありでとりあげられた良寛の一首一首をゆっくりと読んでみると、いい歌なのかもしれないと少し印象が変わってきた。
山かげの岩間をつたふ苔みづのかすかに我は住みわたるかも
この歌については「きちんと天然の呼吸に自己の呼吸を触れしめて歌つてある」と評している。詩は頭で評価することよりも感じ入ることが大事で、それには導き手が必要なケースが結構多い。