読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

前野隆司 『錯覚する脳 ─「おいしい」も「痛い」も幻想だった』(2007)

受動意識仮説について二冊目の本。意識がイリュージョンであり、視覚情報が脳の生成物であることを強調した著作。最後は仏教の「空」に科学の知見から近づいていっている。

付箋箇所:
30, 46, 57, 69, 88, 103, 130, 134, 201, 214, 215

目の誕生以前の世界は、イメージとしては暗黒の世界だ。もちろん、暗黒という概念は、光という概念が世の中に出現したときにその対立概念として生じたのだから、暗黒という言い方はおかしい。暗くも明るくもなく、光や色のない世界、というのが正解だろう。
目をもつ生物が出現したって、状況は同じだ。物理世界には光のクオリアなどというものはなく、ただ電磁波が行き交っているに過ぎない。
それを、視覚受容器が受け取って、明度と彩度という情報を作り出し、そのパターンを視覚情報として脳が作り出すから、その結果として、やっと、私たちは色や明るさを見ることができるに過ぎない。(p130)

 

「物理世界には光のクオリアなどというものはなく、ただ電磁波が行き交っているに過ぎない」とあらためていわれると衝撃がある。しかも「色即是空」といわれるよりも、鮮明な理解が得られる。目がないところで電磁波が飛び交っているだけの世界と、目が誕生し特定波長域の電磁波に反応している世界。

 

筑摩書房 錯覚する脳 ─「おいしい」も「痛い」も幻想だった / 前野 隆司 著

 

前野隆司
1962 -