読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

Mark C. Chu-Carroll『グッド・マス ギークのための数・論理・計算機科学』(2013, 2016)

書店で手に取ったときに、数式が少なく、守備範囲が広そうで、入門書の次くらいのレベルの数学とコンピュータ関連の本という印象があったため購入。文系出身プログラマやSEにお勧め。

集合論は、その従兄弟である一階述語論理(FOPL)と共に、ほぼすべての現代数学の基礎となっています。ほかにも多くの基礎から数学を組み立てられるので、集合論が絶対に必要というわけではありません。しかし、現在のところ支配的な手法はFOPLと公理的集合論の組み合わせです。集合論は論証を行う対象を、FOPLは論証できる能力をわたしたちに与えてくれます。この2つの組み合わせが、私たちに数学を与えてくれるのです。(「集合」p123)

通読すると上記引用の意味がなんとなくではあるが分かってくる。そしてカント―ルと無限について興味が湧いてくる。無限の詐術のような振る舞いについてもっと突っ込んで知りたくなる。数学に興味を持ってもらうという作者の意図からすれば少なくとも一人は成功していると思う。作者(そして訳者)に感謝。

 

第VI部の「機械じかけの数学」ではチューリングマシンについてかみくだいた解説がされているため、興味が高まる。古代から現在を経て未来に向かう数学と計算機。

 

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Mark C. Chu-Carroll 著/cocoatomo 訳

内容:
第I部 数

第1章 自然数
第2章 整数
第3章 実数
第4章 無理数超越数

第II部 変わった数

第5章 ゼロ
第6章 e:自然数でない自然な数
第7章 φ:黄金比
第8章 i:虚数

第III部 数を書く

第9章 ローマ数字
第10章 エジプト分数
第11章 連分数

第IV部 論理

第12章 ミスター・スポックは論理的じゃない
第13章 証明に、真実に、木:おおこわい!
第14章 論理でプログラミング
第15章 時間がかかわる論証

第V部 集合

第16章 カントールの対角化:無限はただ無限なんじゃない
第17章 公理的集合論:長所を残して、短所を捨てる
第18章 モデル:数学の世界のレゴブロックとして集合を使う
第19章 超限数:無限集合の数え上げと順序付け
第20章 群論:集合の対称性を見つける

第VI部 機械じかけの数学

第21章 有限状態機械:単純だけどすごい奴
第22章 チューリング機械
第23章 計算の病理学と、その心髄
第24章 計算:違う、ただの計算じゃない ― λ計算
第25章 数、真偽値、そして再帰
第26章 型、型、型:λ計算のモデル化
第27章 停止性問題