読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

足立恒雄『「無限」の考察 ∞-∞=?』(2009)

数学読み物。対象は高校生くらいから。

「無限」にターゲットを絞って、丹念に解説してくれている。

無限という概念は人類が考え出したものです。有限の対象で成り立つような事柄の中には無限の対象としても成り立つとして差しつかえない場合もありますが、無限の対象に対しては成り立たないとはっきり言える場合もあります。たとえば、どんな集合でも勘定ができる(番号を振れる)というのは有限集合なら正しいですが、無限集合ではだめでしたね。また、成り立つとか成り立たないとかがアプリオリ(先験的)に決まっていないものもあり得ます。そういう場合は、われわれ人間の側に選択肢があることになります。(p118)

 

実無限はカントルによって初めて人類の所有になった、と言っても、私は少しも大げさな表現だと思いません。それほど集合というのは偉大な発明なのです。これは「発見」などという、どこかにあったものをみつけてきたときに使われる言葉を当てはめるにはあまりに巨大な金字塔なので、「集合は人類によって創造された概念である」とここで断言しておきます。(p92)

 
「概念は人類が考え出したもの」という視点が重要と考える。概念は道具であり、有用かどうか、使いこなせるかどうかがポイントだ。

「無限」の数学的考察を頭に入れておくと、人文的・神学的に「無限」を考える時にも役に立つと思う。

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足立恒雄
1941 -
上村奈央(イラスト)