読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

飲茶『哲学的な何か、あと数学とか』(2009)

フェルマーの最終定理の証明をめぐる数学歴史読み物。1600年頃に始まり1995年に最終的に証明されるまでの数学に取りつかれた人間たちのドラマ。感動的な本だが、数学自体の解説本ではないので注意。

 

その手の人々(引用者注:未解決問題に無謀にも挑む人々)には、3つの共通した特徴があるという。

「もういい歳した中年男性である」
「高学歴だが、低収入」
「自分を優れた人間だと思いたがっているが、周りからは、まったく認められていない」

ああ、そんな彼らが、自分の不遇を打破し、閉塞した人生に風穴を開けるには、もはや、不可能とよばれる問題に立ち向かい、それを解決するよりほかにないのだ!
(第2章「未解決問題という名の悪魔」p83)

 

作者も読者も自嘲気味に同一化できるところで、熱量ある記述になっているが、本当のところ本心からは笑えない。小さな承認を積み重ねられないのに、一発逆転を狙ってしまう性向は容易にはつぶせない。

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