精神科医の香山リカと三人の日本人哲学者との対談三本。入不二基義、永井均、中島義道というラインナップ。
聞き役の香山リカの切り込み方が浅く一本調子なこともあって、対談の成果を探すのがわりと難しい。香山リカとしてはいまの世の中の反知性主義に対して知性の側から戦いを仕掛けていきたいのだろうが、知性側の知性の切れ味が鈍い。「レスリング」「瞑想」「世界の理不尽さ」についてなどのテーマは、どちらかというと身体と内面の調整に向いているのではなかろうか。戦うための武器にまではなっていない。
私もつくづく思うのは、身体は有機体としての生物でしょ。それと言語が合わないのです。ズレちゃう。言語は、どうしてもそこに宿りきれないのです。教育されますから、言語は誰にも宿るのですが、とても居心地が悪いのです、この体に。それで言語は、いわゆる外からきた感じがする。ある意味で外からきたものであって、カントの触発はそのことを言っている感じがする。言語を学ぶといいます。でも、言語を学ぶときに、学ぶ力を持っていたから学べたわけですね。不思議です、それが。そうするとズレを感じている極端な人が破綻を見せたり、発症したりするんじゃないか。(「哲学で、世界を壊す」中島義道 p229)
内面ストレッチくらいの哲学風対談。体操であって、戦闘ではない。