琳派四人目。デザイン感覚が横溢したとき、画面上に重力のない異世界が出現する。
抱一の引力圏を離れた其一は、自己の才能の赴くままに飛翔し、多面的な画質の傑作を生み出す。融合や統一に向かうことなく、大きな振れ幅をもちながら、画風の昂揚期を迎えていた。（p26）
画面を垂直に伸び埋め尽くす芒、濃紺の色を湛えて粘性をもった妖気を感じさせる水、重さをもたずに浮遊していると思わせる胡瓜や茄子そして藤の花、はばたかない小鳥、太い光線のように画面を貫くまばゆい落雪。余白の大きな金地。方向感を失わせる非現実の魅力。
河野元昭
1943 -
鈴木其一
1795 - 1858
