読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

橋本治『ひらがな日本美術史4』(2002)

江戸の美術。大名から大衆の美術へ移りつつある時代。

第2巻で「日本人は、もうあらかたをしっている。そういう日本人にとって必要なのは、”その先の詳しさ”なのである」と言っていたところの「その先の詳しさ」を本巻では俵屋宗達を介して語ってくれている。

俵屋宗達を最高の画家とするような形で、日本美術は存在している」というのは、おそらく、「俵屋宗達の龍が一番リアリティがあるから」ではない。宗達の超越は、「彼が平気で説明という行為を超えていて、しかもなおかつ、説明しようと思ったら、誰よりもちゃんとその説明ができるから」である。
日本の美術は、「なんとかして”説明”という理屈臭さを超えたいと思っているものの集積」なのだろうと、私は思っているのである。(その六十二「素性の知れぬもの」p37)

「理屈」の先にあるいいもの。

www.shinchosha.co.jp

目次:
その六十二 素性の知れぬもの 俵屋宗達筆「風神雷神図屏風
その六十三 笑うもの 俵屋宗達筆「田家早春図」
その六十四 勝つもの負けるもの 本阿弥光悦書&俵屋宗達筆「四季草花下絵古今集和歌巻」
その六十五 大胆なもの 本阿弥光悦作「舟橋蒔絵硯箱」
その六十六 ひたむきなもの 尾形光琳筆「燕子花図屏風」
その六十七 紆余曲折するもの 尾形光琳筆「紅白梅図屏風」前編
その六十八 ジヴェルニーに通じるもの 尾形光琳筆「紅白梅図屏風」後編
その六十九 人間のあり方を考えさせるもの 「桂離宮
その七十  大衆的なもの 「大津絵」
その七十一 祈るもの 「円空仏
その七十二 骨太なもの 菱川師宣筆「見返り美人図」と懐月堂安度筆「遊女と禿図」
その七十三 ボランティアなもの 鈴木春信筆「水売り」
その七十四 知的なもの 石川豊信筆「花下美人図」と鈴木春信筆「藤原敏行朝臣

橋本治
1948 - 2019