読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

瀬尾文子『春怨秋思 コリア漢詩鑑賞』(2003)

高句麗新羅・高麗・李朝1200年のなかから、代表的な詩人100人の詩篇146首を紹介している。作者の紹介からは政争によって死刑や流罪、投獄、辞職などに追い込まれた人物が多いような印象を受けたが、それに比して紹介されている詩はおとなしいものが多いように感じた。政治的含意を持つ比喩がすぐに読み取れないところもあるので、読み手側の問題も多くあると思う。また、女性が漢詩を書くことに抑圧のあった時代であるにも関わらず、女性作者が多く取り上げられているのは、著者の努力の成果であろう。

 

偶吟 宗翰弼(そうかんひつ ソン・ハンピル)

開花昨夜雨  花は昨夜の雨に開き
花落今朝風  花は今朝(こんちょう)の風に落つ
可憐一春事  憐れむ可し 一春の事
往来風雨中  行き来す 風雨の中を

p142

 

貧女吟 許蘭雪軒(きょらんせっけん ホ・ナンソルホン 1563 - 1589)

手把金剪刀  手に把(と)る 金剪刀(きんせんとう)
夜寒十指直  夜寒く 十指(じっし)直(ちょく)す
為人作嫁衣  人の為に 嫁衣(かい)を作り
年年還独宿  年年(ねんねん) 独りの宿に還る

p166

本書で「時調」という日本の和歌の位置に相当する詩の形式の存在を知れたことも大きい。 今後、別の書籍で読んでみようと思う。

 

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瀬尾文子
1927 -