読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

岡田秀之『いちからわかる円山応挙』(2019)

写生の画家といわれる円山応挙は、たんにものを見て描くということをはじめた人ではなかった。

「秘聞録」には、いかに現実のように見えるかを追求している言葉もある。
一、応挙云、鹿ハ馬ニテ画故不宜、羊ニテ可画云々、仁山ノ鹿宜云々
一、円山云、人物手足鏡ニウツシ、我手足ヲモ可写、以鏡写以遠目鏡可写之云々
鹿を描くとき、従来馬に似せて描いていたが、そうではなく、むしろ羊を見て描くのがいい。人物の手足を描くときはそのまま描くのではなく、鏡に映ったそれらを遠くから見て写したほうがいいという意味である。応挙にとって写生とは、単に対象をそのまま描くというのではなく、あくまでもリアリティをもって描こうとするための手段であった。(「応挙にしかできなかった表現―日々進化した技」p64-65)

技術に裏打ちされた表現で幾通りもの作を生み出した職人気質の作家。好きな作品は多々あるが、同時代人の若冲や弟子蘆雪のようにはどこか突き抜けていない気もするので、勝手にこれからの売り出し方などを考えてみてしまう。応挙といえば何なのか? 日本画に「かわいい」系を切り拓き蘆雪につないだはじまりの人というところが一番受けがいいのではないかと思う。そういった視点から見れば、表紙を飾っているころころした「子犬図」、ふわふわやわやわ感が強調されている「木賊兎図」、愛嬌のある「猫図画賛」、やさしい眼と体をもった牛がいる「許由巣父図」などの動物を押し出していくべきかもしれない。

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円山応挙
1733 -1795
岡田秀之
1975 -