読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

白川静『中国古代の民俗』(1980)

古代歌謡を通して民族の問題を思考する一冊。おそれ多く繋がりづらいもろもろの神霊をコントロールするために、祈り、卜い、文字化して永続化させる、という原初への考察がとても印象深い。

文字が作られた契機のうち、もっとも重要なことは、ことばのもつ呪的な機能を、そこに定着し永久化するということであった。ことばとしての呪言は、時間のなかにあることもできず、また空間を支配することもできない。しかしそれを文字に表記し、書きとどめておくことによって、その呪能は断絶することなく、また所在の空間を支配することができる。そしてこれを神木に著けて、神の前に掲げておけば、神はいやおうなく、その祈りに注意していなければならない。それが告である。(第3章「言霊の思想」p84)

 

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内容:
第一章 民俗学の方法
 1 わが国の民俗学
 2 中国の民俗学
 3 古代文字と民俗学
第二章 古代歌謡と民俗
 1 万葉集民俗学
 2 詩経民俗学
 3 発想の問題
第三章 言霊の思想
 1 祈りについて
 2 興的発想の展開
 3 巫祝と文学
第四章 詩経民俗学
 1 草摘みについて
 2 祝頌の詩
 3 恋愛詩の諸相
第五章 ト辞の世界
 1 自然のいぶき
 2 人間のありかた
 3 社会の生活
第六章 語部と巡遊者
 1 語部の文学
 2 桑摘みの女
 3 巡遊者の文学
第七章 月令と歳時記
 1 月令の組織
 2 農事暦と歳時記
 3 通過儀礼について

白川静
1910 -2006