読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

野矢茂樹『無限論の教室』(1998)

カバー表:

「無限は数でも量でもありません」とその先生は言った。ぼくが出会った軽くて深い哲学講義の話

著者の友人の哲学者、田島正樹をモデルにした無限論ゼミ風物語。
カント―ル、ラッセル、ゲーデルの業績をベースに物語は展開する。

私が一番興味を持ったのは、(言われてみれば当たり前なのだが)概念というのは部分集合なのだという視点。

部分集合と概念とは同じものだと理解してください。(p107)

人類が名前をつけている概念なんてタカが知れています。でも、対象をまとめあげる可能な仕方はもっとずっと多いわけです。そうして対象をまとめあげる可能性、すなわち概念化の可能性だけを考えるならば、それは可能な部分集合の数だけあるといわねばなりません。つまり、いま問題にしているのは、現実に人間が概念化しているものの総体ではなく、概念化されうるものの総体なのです。(p106)

無限を思考の対象にすると通常感覚とは異なる次元が開けてくる。

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野矢茂樹
1954 -