読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

佐々木敦 + 東浩紀 編著 『再起動する批評 ゲンロン批評再生塾第一期全記録』(2017)

批評家養成塾の課題と模範解答がメインの一冊。講師に立った人で知らない人の方が多いという現状が一般的に批評が読まれていないということを物語っていると思う。批評の対象や関心領域が広すぎてフットワークの良い人以外なかなかついていけないという事情もあるのではないか? 今の時代、はたから覗いて何処が批評のメインストリームなのかはよく分からない。「批評は一人でやるもんじゃない」っていうことで、誰と一緒にやるかを考えながら、読み手も読まなければいけないのだと思う。

もし現代においても「批評」に創造的な役割が残されているとしたなら、時間の流れに逆行し、空間の隔たりを乗り越えて、異なったアーカイヴ同士をつなげ合わせ、ジャンルを乗り越えた理論を構築していくことに尽きるであろう。(安藤礼二 p128)

自然着火するような素材でなければ、焚き付けづらいものは、火が付きやすいようにまずは乾かすようにしなくてはならない。火力の強い人たちに近づくとまずはそんなことを考える。

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内容:
【第一部】批評再生塾第一期の軌跡
東浩紀+佐々木敦 対談 批評を再起動するために

第一期講師陣による課題と回答
東浩紀 ポスト昭和はどこにあるのか  昭和の亡霊、終わりなきリズム
渡邉大輔 「ポスト映画の世紀」に、「映画(批評)」は再起動できるか  横長から遠く離れて?――映画的なもの、映画的でないもの三浦哲哉 サスペンフルな批評  ナポリタンの理念とサスペンス
湯浅学 誤読、誤解、行きちがい、失敗を考え直す。しくじりの効用を論じて下さい   〝非利き脳〟にきけ
畠中実 「音響」という視座から新しい視点や解釈を与えること  映画を読む、音響的に――ジム・オルークの音響映画
渡部直己 「細部」に宿る「神」を探せ  「秋幸」という名
安藤礼二 「近代日本思想」を批判的に論じよ  批評とは何か――「体験」を作品化すること
さやわか 文化について書くことで状況を語り得るのか  誤り続けねばならない
速水健朗 最新型「アメリカの影」を見出してください  マクドナルドから見るアメリカへの憧れ
細馬宏通 歌い手について考えていただこうと思います。  促音のポケット――RCサクセショントランジスタ・ラジオ』
大澤聡 対話の批評、批評の対話  共同討議感想戦――「昭和批評の諸問題1975‐1989」補遺 大澤聡 澤田歩
大澤真幸 現代社会に神はいるか?  現代社会に神は(どこに)いるのか?
佐々木敦 「昭和90年代」の「批評」  「昭和ノスタルジー」の変容問題

第一期総代選出作 吉田雅史 漏出するリアル

【第二部】再起動する批評
東浩紀+佐々木敦+吉田雅史  座談会 批評は一人でやるもんじゃない
第一期総代書き下ろし 吉田雅史 In The Place To Be ECD