読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

萱野稔人『リベラリズムの終わり その限界と未来』(2019)

滅入る。リベラリズムの限界を厳密に考察するのは有益なことだとは思うが、リベラリズムがうまく機能しない理由として、再分配されるパイが縮小しているという現実がどうにもならない条件としてあると繰り返し述べられていると、やはり気持ちは沈んでいく。冷静に分析されている分だけ、余計につらい。

ロールズの必死の努力にもかかわらず、パイの分配をリベラリズムによって正当化することはきわめて難しい。それに対して、リベラリズムとは別の哲学原理―とりわけ功利主義やメンバーシップの論理―によってパイの分配を正当化することは容易である。
やはりパイの分配はリベラリズムとは別の哲学原理のもとでなりたっているのではないか。少なくとも私たちは、パイの分配に賛成することとリベラリズムを結び付けることはやめなくてはならない。(p227-228)

大盤振る舞いはできない世界。問題山積で滅入っていても、まずは取り乱さないように呼吸を少し整えてみる。

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内容:
第1章 私たちはリベラリズムをどこまで徹底できるのか?―古典的リベラリズムの限界について
第2章 リベラリズムはなぜ「弱者救済」でつまずいてしまうのか?―現代リベラリズムの限界について
 1.リベラル派への批判の高まりは社会の右傾化のせいなのか?
 2.リベラリズムは「パイの分配」をどこまで正当化できるのか?

 

萱野稔人
1970 -