読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

福岡伸一『世界は分けてもわからない』(2009)

「世界は分けてもわからない」といえるには、分けて考えてきた蓄積を知っていることも重要で、その上で、零れてしまうものにも感度を高くしなくてはならない。

生命現象において、全体は、部分の総和以上の何ものかである。この魅力的なテーゼを、あまりにも素朴(ナイーブ)に受け止めると、私たちはすぐにでも危ういオカルティズムに接近してしまう。ミクロなパーツにはなくても、それが集合体になるとそこに加わる、プラスαとは一体何なのか。
(中略)
一体、プラスαとは何だろうか。それは実にシンプルなことである。生命現象を、分けて、分けて、分けて、ミクロなパーツを切り抜いてくるとき、私たちが切断しているものがプラスαの正体である。それは流れである。エネルギーと情報の流れ。生命現象の本質は、物質的な基盤にあるのではなく、そこでやりとりされるエネルギーと情報がもたらす効果にこそある。(第6章「細胞のなかの墓場」p125-126)

「物質的な基盤」を追求してこその認識だと思う。

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福岡伸一
1959 -