読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

前野隆司『AIが人類を支配する日 人工知能がもたらす8つの未来予想図』(2019)

受動意識仮説+幸福学の前野隆司がシンギュラリティを見据える世界について語った一冊。現状認識は正しく精密に、将来展望においては最大限の希望を掲げて前進することをすすめているように感ぜられた。特に東洋的あるいは日本人的な感覚からするとシンギュラリティにあまり振り回されるのはいかがなものかという視点は参考になった。ハルマゲドンや最後の審判という思想は、日本には最近になって入ってきたものだ。どちらかというと「山川草木悉皆成仏」といった天台本覚思想のほうにわれわれ日本人は親近感がある。だからといって能天気にというか受動的に未来を迎えるのではなく、よりよい未来をつくるべく創意工夫していくことをすすめているのは好感が持てた。ただし読み物として本書はそれほど面白いものではない。理詰めで論考を組み立てている書記の著作のほうがパワフルだ。

日本のロボットといえば、鉄腕アトムアンパンマンドラえもん。みんな正義の味方です。日本人が擬人化すると、善良なロボットになるというのは、日本人の心根を反映しているということなのではないでしょうか。
ですから、シンギュラリティを超える技術を発明するのは、日本人のほうが良いように思います。いつも一番になりたがる人々がシンギュラリティを超えると、危険なのではないでしょうか。
ここはみんなで力を合わせて、平和なロボットを生み出していこうではありませんか。(第8章「AIがもたらす8つの明るい未来」p199)

平和なロボットを生み出していくには、やはり技術力も必要であるので、しっかり勉強はしておいた方がよい。ロボットと共生していくには、ロボットに関する知識があったほうがないよりも良いに決まっている。

www.makino-g.jp

目次:
第1章 AIがもたらす8つの恐ろしい未来
第2章 ディープラーニングのどこがすごいのか~AIとロボットと私~
第3章 われ思う、しかしわれなし~受動意識仮設とAI~
第4章 心のあるロボットの造り方~ヒトとゾンビとAI~
第5章 なぜ日本は負け続けるのか~イノベーションとAI~
第6章 経営学×幸福学~幸福学とAI~
第7章 死ぬとはどういうことか~死とAI~
第8章 AIがもたらす8つの明るい未来
終章 全体調和型の社会をめざして~森とAI~

 

前野隆司
1962 -