金子光晴(父)、森三千代(母)、森乾(息子)三人が戦争から逃げるようにして生きている間に書き綴った私家版詩集。
息子20歳とすると、父50歳、母44歳の時の作品。
本に持っていかれた人生が生んだ詩。
誰とも顔を合されぬといつて、室のうちにひたがくれ、本と本のあひだを紙魚のやうに逃げまはる。銀色のからだをして。
(「問答」詞書)
ボコの若さは
本のなかであそぶ。
ボコのこひびとも
本のなかにゐて微笑む。
ボコを本に与へる方が
まだしもだ。
戦争にやるよりは。
(「三月一日はボコの誕生日」部分)
金子光晴
1895 - 1975
森三千代
1901 - 1977
森乾
1925 - 2000