読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

野口米次郎「薄明」(『夏雲』1906 より)

薄明

 私は薄明の行方を見届けんとその後を追ふ………薄明は日中の光明のなかへ消える。私は再び薄明の行方を見届けんとその後を追ふ………薄明は夜の暗黒のなかへ消えうせる、おお薄明よ、私に語れ光明と暗黒とは同じものであるか。
 私は歓喜から泣いたそれは昨日のことだ、今日私は悲哀の涙を流してゐる。おお涙よ、私に語れ、歓喜の涙と悲哀の涙は共に同じものであるか。
 
(『夏雲』1906 より)

野口米次郎
1875 - 1947
 
野口米次郎の詩 再興活動 No.026