読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

カレル・チャペック『カレル・チャペックのごあいさつ』(2004)

日本で編まれたチャペックのエッセイ・コラム集。軽妙でありながら、ゆったり構えていて奥深い味わいのある小品が読める。全28篇。

人生最大の苦痛であるメランコリーは小さな原因に由来する痛みです。英雄的行為を許さないがゆえに最も重症なのです。英雄的憂欝病患者はいません。憂欝病はいかなる場合も小さな痛みにたいする弱さです。あるいは、むしろ無防備さです。
(中略)
古代の英雄は神の秩序と衝突して破滅する、だから悲劇的なのです。現代の英雄は人間の秩序と衝突して破滅します。だからいくらか滑稽で、とりわけ欝病的です。
(中略)
苦痛を耐えて生きること、それは欝病的です。そしてまた、現代的英雄が必要というのであれば、英雄的死は不要です。そのかわりオプティミズムの英雄でなければなりません。
(「メランコリー」より)

 重いモチーフを扱っていても、沈み込まない、何処かしらユーモアのある作品に仕上げるのは、エッセイ以外の作品にも共通したチャペックの特徴ではないかと思う。

青土社 ||文学/小説/詩:カレル・チャペックのごあいさつ

 

カレル・チャペック
1890 - 1938
田才益夫
1933 -