読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

野口米次郎「風の一片」(『夏雲』1906 より)

風の一片

 若しも私が青海から吹く風の一片であるならば、私は南方の平野に咲く罌子粟(ポピー)のなかに恋愛を捜すであらう、東方の山に輝く太陽に殺された白露の涙を数へるであらう。
 若し私が青海から吹く風の一片であるならば、私は沈黙と灰色、さては胸中に漲(みなぎ)る心の荒廃を示し或は暗示するであらう。
 
(『夏雲』1906 より)

野口米次郎
1875 - 1947
 
野口米次郎の詩 再興活動 No.030